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「いらっしゃい――仲井か、早いね」
「おう」
開店前の治の店。いつものようにふらっと仲井が入ってくる。
レジに小銭を入れていた治は、手提げ袋を目ざとく見る。
「何、それ?」
「土産たい」
がさがさと仲井がビニール袋から取り出したのは、小さな花をつけたプリムラ。
「へえ、可愛いじゃない」
治は仲井の隣にやってくる。
「でも――植木鉢かー」
「なにたい、気に食わんか」
「いや、そんなことないけど……よく言うじゃない、お見舞いの時、『根付く』から良くないって」
治はカウンターの窓側、光の当たる場所に鉢を置いた。
「アホかい、客が根付いた方が商売繁盛で結構たい」
「あ、そうか」
仲井はカウンターに腰掛け、煙草を取り出した。
「で、なんて花なの、これ」
「何やったかな、西洋の……サクラソウとかなんとか」
「ふーん」
さしたる興味を引かれないような調子で生返事をする。
仲井は、紫煙を燻らせはじめる。
「でも――意外だな」
「何が」
「仲井が……花を買うなんて」
治は怪訝な顔つきになる。
「まさか――、何か企んでる?」
「な、なに人聞きの悪いことっ! あんさん、どういう目で人を見とるばい。この店、殺風景すぎるたい、おいがちょっと気を効かせてやな……」
実際は、夕べ役満をあがったご祝儀で、とりあえず目についた花を買ってみたという顛末である。
「えぇ? そうかなあ。他の店だってこんなもんでしょ……でもさ」
「ん」
「きっと女性のお客さんは喜ぶよね、どうもありがとう」
仲井の方を見て微笑む。
「あ、ああ……」
しばらくゆっくりと煙草をふかす。吸い口の際まで吸ったところで揉み消し、告げる。
「ほいじゃ」
「ええ~っ? もう行っちゃうの? 来たばっかりじゃないか」
「おいは忙しいたい、また来るで」
「――うん」
馴染みの雀荘に向かう途中、花を買った店の前を通りかかった。
ふわっと風が抜け、色とりどりの名も知らぬ花たちが優しく揺れる。
確かに、あの店には花なんか要らないかもしれない――。
そんなことを考え、仲井は一人赤面した。
(了)
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