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【仲井×治】恋人編?
【以下腐要素含みます】
微糖
◇◆◇◆
休日。映画を観ることにした二人。
「楽しみだね~。時間大丈夫かな」
「ん? ああ」
「あれ……?」
仲井と連れ立って外に出た治は、ふと見上げた空の形がいつもと違うことに気づいた。
せせこましい雑居ビル群から覗く快晴の空。しかし、今日はその小さな青色が更に小さく切り取られていた。
「どしたと?」
「あのビル、ここからも見えるんだね」
「ん~?」
治の視線に釣られて空を見上げた仲井が、眩しさに目を細める。
好景気に浮かれた街は、変遷を続けていた。 華やかな目抜き通りには今なお建設中の建物も多く、人の流れも風景も変わっていく。駅前に出現した高層ビルは、その象徴的なシンボルであり、工事が終わった今、その存在を誇示するかのように隆々とそびえ立つ。
時代の流れは、一見別世界のようなこの裏通りまで確実に侵食していた。
「高いなあ……」
嘆息混じりの治の声は、感心したようにも気圧されたようにも聞こえる。
「あれ、何メートルくらいあるんだろうね」
いつの間にか紫煙をくゆらせていた仲井だったが、ビルを見上げたまま親指を立てて片目を瞑り、画家が絵を描く時のような仕草をする。それから、真剣な顔をして、治を見つめる。
「三センチ」
「……は?」
「ほれ、こうやって見れば、三センチしかなかよ」
「えっ、何だよそれ~。いくら何でもそれはないだろ」
治が笑うと、真面目な表情を緩めて自分もククっと笑う仲井。それから「早う行こうばい」と歩き出す。 そういえば、と治は思い出すところがあった。
(あの時もそうだったよな、オレが何を言っても聞かないで「打つしかなか」って……)
自分よりも強大な相手に挑み、完膚なきまでに叩きのめされた仲井。事前に治が敵う筈ないと諌めても聞く耳を持たなかった。だがそれがこの男の測り方なのだ。例え周りの評価がどうであっても関係ない。自分で実際に確かめ、自分の物差しで相手を測る男なのだった。
不器用だとは思いながらも、今はその生き方に共感できるものを感じている。それは治自身も自分を拠り所に生きているからなのだろう。
先を行く背中に声をかける。
「じゃさ、帰りはあのビル登ってみよう?」
「え……?」
「それで、三センチかどうかわかるだろ」
追いついた治を振り返り、仲井は眉をひそめる。
「何言ってるたい、人の冗談に……」
「最上階にレストランあるんだってさ」
「……そげなもんあるんか」
満更でもない顔で煙草を一吸いし、再び空を見上げる仲井。
治もつられて見る。歩き出したこの位置からは、既にビルの姿は見えなかった。
(了)
お題こちらより頂きました:確かに恋だった
URL:http://have-a.chew.jp/
それは甘い20題
02.3センチ
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