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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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飛行機雲




(けっ、どいつもこいつも浮かれやがって――)

街を歩けば、クリスマス一色。バイト先までは特に人通りも多いせいか、いたるところにきらびやかな垂れ幕がかかり、サンタやツリーが目に飛び込んでくる。

(何がクリスマスだよ。お前らがへらへらしてる間に、働いてる人間もいるっていうんだよ)

サンタの服装をした女の子からティッシュを受け取る。なんとなく親近感を覚える。
かといって、自分も仮に休みだとしても一緒に過ごす人間とていない。きっと家でテレビを見ながら腐っているか、パチンコにでも行くだけだろう。まだこうやってバイトをしている方がましというものだ。

勤務先のコンビニでも赤や緑、金色の装飾がけたたましい。思わず目を塞ぎたくなる。 仏頂面でレジ打ちをしていれば、カップルが何組も訪れる。酒だのつまみだのアイスだのを買っていくが、なぜか自分が普段買うものとは明らかに違う華やかさがある。

(くそっ)

お釣りを落とし、男に文句を言われた。
萎縮して謝った後には、店を出る間際、女の方がくすくす笑いながら追い打ちをかける。
「クリスマスだってのに、バイトなんてかわいそーっ」

(――ぐっ……。ああ、くそっ、何だってんだよっ……!) 

だが、ありがとうございました、と頭を下げるしかない。
店長がどなる。

「カイジくん! ゴミ出しまだやってないのー?」
「あっハイ、すみませんっ……!」


外に出る。案の定、ダストボックスにはゴミがあふれている。だが今日はまだましだ。きっと明日の朝、この辺りは酔客の残した土産――汚物まみれになっていることだろう。

(ま、俺のシフトじゃないからいいけど。佐原のやつザマーミロ)


ちらばったカップ麺の箱やペットボトルを袋に押し込む。
天気は快晴。
コンビニの制服でもそれほど肌寒くなかった。ふと、上を仰ぎ見る。

(あれ、クリスマスの日って、こんなに青空だったか?――あ)

飛行機が白い筋を引きながら空を行く。
きっと気候の条件が揃っているのだろう、よく見れば真っ青な空に何本も飛行機雲が描かれていた。


(――姉さん、元気かな)

左手で陽の光を遮りながら、カイジはゴミ袋を持ったまま、眩しそうに空と雲を見つめていた。





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御礼

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(ラブシーンあり・軽目)

つづきはこちら



店のドアが開く。
コーヒーの香りが漂ってはいるが、「いらっしゃい」と出迎える声が聞こえない。

「――ん、なんやおるやないか」
「あー、お早う……」

治は待機客用のソファに腰掛け、真剣な表情で何やら読んでいる。


「何読んどるたい――『よくわかる確定申告』?」
「うん、もう少しだからちょっと待ってて」
「なんや社長さんも大変たい」
「んー……」

集中している治は生返事。手持ち無沙汰な仲井は隣に腰掛け、新聞を開く。
時折ちらちら本を覗いてみる。

「ややこしそうやな」
「ん……一度書類作って……分からないとこだけ調べてる……」
「ふーん」

治は言いながら仲井に寄り掛かる。仲井は片眉をぴくりと上げたが、そのままスポーツ欄に目を落とす。

「仲井……」
「あ?」
「コーヒー入ってるよ、自分で飲んで」
「あ、ああ――まだ、いいたい」
「そう?」



静かな店内には、コーヒーメーカーの蒸気の音と、治のページを繰る音だけが響いていた。







仕事が終わり、誰もいない部屋に帰る。


(今日も充実した一日だった。……本当に)


明日の業務に差し支えない程度のビール。
帰宅途中で買ったつまみと夕飯。

(もうくたくただ)

だが、仕事をしていれば当り前だ。単調に繰り返される日々? いや、そんなことはない。自分だけじゃない、誰だってそうだろ? 日常を積み重ねてこうやって生きていく。

(――それが俺の選んだ人生)

明日だって大事な会議がある。そう、大事な。人生とか、そんなことを考えてる場合じゃない。大切なのは明日のことだ。

煙草に手を伸ばす。仕事をしているときには単なる精神安定剤替わり。だが一人でこうやって紫煙をくゆらせていると、何かを思い出しそうになる。何かとても熱い何かを――。

(くだらない)

答えは出た筈。そう、答えはもう出ている。それがこの生活。
ギャンブルなど、まともな大人だったら見向きもしない。
ましてやそれに依って生きるなど……。そんな雑念が浮かぶのは、仕事に集中出来ていないからではないか。
もっと考えることがあるだろう。他に大事な……大事なことが……。


(――じゃあ何故、俺は毎日酒を飲むのか)

意識が濁る。アルコールが神経を攫う最初の一撃。体力は限界。それに乗ればすぐに眠れる。


そうだ、今日はもう精一杯やった。
もう考えるな。

考えたくない。

何も――。

何も。


行き場を失ったタバコの煙が部屋に充満する。
それをぼんやりと見上げながら、灰皿で揉み消す。
空気の入れ替えをしよう、しなくては、と思ったところで意識が途切れる。



――目覚めれば朝。
既に朝食を食べる余裕はなかった。
急いでシャワーを浴び、身支度を整える。替えのワイシャツがなかったので、昨日のものをもう一度着た。家を出る。


タバコに火をつける。煙は朝の光に混ざって、空に昇っていく。追い抜く女性が手元の吸い差しを迷惑そうに睨んだ。慌ててコンビニの前の灰皿に煙草を落とす。たまった水にじゅ、と火が消える。

それから、自販機で缶コーヒーを買う。
口の中に残った煙草の匂いをコーヒーで流し込み、井川は駅に向かった。





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