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アカギの話。
死にネタじゃないとは思うけど生と死とかそんなアレ。まあいつものぐだぐだ系。
べ、別に命日近いとか関係なんだからねっ・・・!
書きたくなったから書いただけなんだからっ・・・!
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――つまらないことを考えたものだ。
激しさを増す風雨の中、俺は埠頭に立つ。
断崖絶壁へのチキンラン。
限界ギリギリまで海に近づく勝負。先にブレーキをかけた方が負けなのだそうだ。
勢いづいた車はそう簡単に止まるわけなんてない。途中で脱出しても大怪我するだろう。もちろん運が悪ければそのまま崖下に、ということもある。こんな勝負、受ける方がおかしい。それは初めからわかっている。
――だが。
ここからずっと真っ直ぐ。
車で思い切り走ってやったらどのくらいのスピードが出るのか。
自分のこれまでのクソみたいな人生、振り返る暇なんてないほど――。
(スカッとするかもな)
海の方に目を凝らしてみても、雨で目なんて開けていられない。しかし、見えないはずの道が見える気がした。遠く聞こえる波音。泥のような色の海水の合間には、生と死が絡みあっている。
(ま、死ぬのはいいとしても)
俺は空を見上げた。
風はますます強まっていた。こんな吹きっさらしの中、カモメが一匹、旋回している。
(痛くなけりゃいいが……苦手なんだよな、そういうの)
俺がくだらないことを考えていると、餌を見つけたのか、そいつは海に向かって舞い降りる。綺麗な一直線だった。
(――お前には見えるんだな。生への道筋が)
ゆっくり歩き出す。痺れを切らした対戦相手たちが浴びせる怒号も、吹き荒れる風にかき消されていく。あっというまに服がびしょ濡れになった。だがまあ……。
「海に入っちまえば関係ねぇか」
無意識に、ポケットの煙草を探る。――が、意味のないことに気づき、俺は苦笑した。
(了)

灰皿に置いた煙草から立ち上った煙が、染み一つない板天井に登っていく。
俺は寝そべったままそいつを見ながら、次の一本に火をつける。
来るべき対戦の日――。
おそらくは、血液を賭ける麻雀になるのだろう。
生命が抜き取られ、死に向かう恐怖に相対する。
諦めや痛み、それが人を死に向かわせることがある。
死んだ方がまし、という責め苦を負わされれば、発作的に舌を噛み切ったり屋上から飛び降りたりもする。
しかし、この勝負の真に恐ろしいところは、苦痛がないところだろう。
あの男……平山の外傷は注射針一本だった。
採血されるものは、忍び寄る死から逃げることも、自暴自棄に突っ込むこともできない。ただ、じっと座して、最後の瞬間まで死に向きあわなくてはいけないのだ。
そう、その発想こそが――鬼っ……!
だというのに俺はと言えば、どこかでこの勝負に胸が高鳴っている。
救いようがない――。
俺は手を伸ばし、吸いかけの方を灰皿でとんとんと叩く。
――そういえばあいつは。
命が惜しい人間が、なぜあんな無謀なことに巻き込まれたのか。
金なのか。
身の丈を超えた金をどうこうできるタマじゃない。安岡さんが言っていたように、口車にのせられたか何かか。
まあ、多分。納得などできなかっただろうな。
白い髪を振り乱し、激昂する様子が目に浮かぶ。不謹慎だろうが、思わず口が緩む。
それでもやはり……。
無念だったのだろうか。
さっきの吸殻が最後の灰を落とした。静かな部屋には、そんな音さえ響くようだ。
死者はもう何も教えてくれない。
だからこっちはあれこれ考えるしかない。不利な勝負だ。
いや――。
死んだヤツには勝てない、と思う。
「ん」
廊下に人の気配。仰木組の三下だろう。
「失礼します」
俺が黙っていると、音もなく障子が開いた。
「アカギさん、お食事です」
そうだ……、体力はできるだけつけておきたい。
「ああ」
答えてから吸いかけを口に持って行き、しばらく目を閉じた。
果たして俺は――キレイに死ねるのだろうか。
(了)

正月といえば、どんよりした空がすぐに思い浮かぶ。
降り出すでもなく、暗くもなく、ただ曇っている。
だからこそ、たまに見える青空や、ときどき降る雪が印象に残っている。
垂れ込めた空は、この地でも変わらなかった。
肌寒さを感じた俺は、パチンコ屋を冷やかすことにした。
年末の大掃除でも逃れてきたのか、店は結構な繁盛ぶり。
ギャンブルは景気と関係ないというが、饐えたような匂いとくすぶった熱気が心地よい。
最後の小銭を玉に変え、時間をつぶす。
隣で常連らしい二人が話している。
「例の賭場、夜通し開かれるそうだ」
「年越しってことかい? 本当か、世の中には酔狂なやつらもいるんだな」
「元旦から博打なんて、ろくな一年じゃねえだろ。――いや、一生治らねえな」
「晦日までこんなとこにいるお前が言う筋か?」
「違いねぇ」
男たちは笑う。俺は片割れに話しかけた。
「なあ、その賭場――どこに行けばいい?」
外に出れば、北風が吹き出していた。
遠くにちら、と覗いた青空。寒さが身を刺す。
それでも少なくとも正月まで、俺の居場所はあるかもしれなかった。
(了)