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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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アカギの話。

死にネタじゃないとは思うけど生と死とかそんなアレ。まあいつものぐだぐだ系。
べ、別に命日近いとか関係なんだからねっ・・・!
書きたくなったから書いただけなんだからっ・・・!



□■□■

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つづきはこちら

見る前に跳べ



――つまらないことを考えたものだ。

激しさを増す風雨の中、俺は埠頭に立つ。

断崖絶壁へのチキンラン。
限界ギリギリまで海に近づく勝負。先にブレーキをかけた方が負けなのだそうだ。
勢いづいた車はそう簡単に止まるわけなんてない。途中で脱出しても大怪我するだろう。もちろん運が悪ければそのまま崖下に、ということもある。こんな勝負、受ける方がおかしい。それは初めからわかっている。


――だが。

ここからずっと真っ直ぐ。
車で思い切り走ってやったらどのくらいのスピードが出るのか。
自分のこれまでのクソみたいな人生、振り返る暇なんてないほど――。

(スカッとするかもな)


海の方に目を凝らしてみても、雨で目なんて開けていられない。しかし、見えないはずの道が見える気がした。遠く聞こえる波音。泥のような色の海水の合間には、生と死が絡みあっている。


(ま、死ぬのはいいとしても)

俺は空を見上げた。
風はますます強まっていた。こんな吹きっさらしの中、カモメが一匹、旋回している。

(痛くなけりゃいいが……苦手なんだよな、そういうの)


俺がくだらないことを考えていると、餌を見つけたのか、そいつは海に向かって舞い降りる。綺麗な一直線だった。


(――お前には見えるんだな。生への道筋が)



ゆっくり歩き出す。痺れを切らした対戦相手たちが浴びせる怒号も、吹き荒れる風にかき消されていく。あっというまに服がびしょ濡れになった。だがまあ……。

「海に入っちまえば関係ねぇか」


無意識に、ポケットの煙草を探る。――が、意味のないことに気づき、俺は苦笑した。



(了)

恐怖




灰皿に置いた煙草から立ち上った煙が、染み一つない板天井に登っていく。
俺は寝そべったままそいつを見ながら、次の一本に火をつける。


来るべき対戦の日――。

おそらくは、血液を賭ける麻雀になるのだろう。
生命が抜き取られ、死に向かう恐怖に相対する。

諦めや痛み、それが人を死に向かわせることがある。
死んだ方がまし、という責め苦を負わされれば、発作的に舌を噛み切ったり屋上から飛び降りたりもする。

しかし、この勝負の真に恐ろしいところは、苦痛がないところだろう。
あの男……平山の外傷は注射針一本だった。

採血されるものは、忍び寄る死から逃げることも、自暴自棄に突っ込むこともできない。ただ、じっと座して、最後の瞬間まで死に向きあわなくてはいけないのだ。

そう、その発想こそが――鬼っ……!

だというのに俺はと言えば、どこかでこの勝負に胸が高鳴っている。
救いようがない――。


俺は手を伸ばし、吸いかけの方を灰皿でとんとんと叩く。


――そういえばあいつは。
命が惜しい人間が、なぜあんな無謀なことに巻き込まれたのか。

金なのか。


身の丈を超えた金をどうこうできるタマじゃない。安岡さんが言っていたように、口車にのせられたか何かか。
まあ、多分。納得などできなかっただろうな。

白い髪を振り乱し、激昂する様子が目に浮かぶ。不謹慎だろうが、思わず口が緩む。


それでもやはり……。
無念だったのだろうか。


さっきの吸殻が最後の灰を落とした。静かな部屋には、そんな音さえ響くようだ。


死者はもう何も教えてくれない。
だからこっちはあれこれ考えるしかない。不利な勝負だ。

いや――。
死んだヤツには勝てない、と思う。



「ん」

廊下に人の気配。仰木組の三下だろう。

「失礼します」

俺が黙っていると、音もなく障子が開いた。

「アカギさん、お食事です」

そうだ……、体力はできるだけつけておきたい。

「ああ」

答えてから吸いかけを口に持って行き、しばらく目を閉じた。


果たして俺は――キレイに死ねるのだろうか。



(了)

寒風



正月といえば、どんよりした空がすぐに思い浮かぶ。
降り出すでもなく、暗くもなく、ただ曇っている。
だからこそ、たまに見える青空や、ときどき降る雪が印象に残っている。

垂れ込めた空は、この地でも変わらなかった。
肌寒さを感じた俺は、パチンコ屋を冷やかすことにした。

年末の大掃除でも逃れてきたのか、店は結構な繁盛ぶり。
ギャンブルは景気と関係ないというが、饐えたような匂いとくすぶった熱気が心地よい。
最後の小銭を玉に変え、時間をつぶす。
隣で常連らしい二人が話している。

「例の賭場、夜通し開かれるそうだ」
「年越しってことかい? 本当か、世の中には酔狂なやつらもいるんだな」
「元旦から博打なんて、ろくな一年じゃねえだろ。――いや、一生治らねえな」
「晦日までこんなとこにいるお前が言う筋か?」
「違いねぇ」

男たちは笑う。俺は片割れに話しかけた。

「なあ、その賭場――どこに行けばいい?」


外に出れば、北風が吹き出していた。
遠くにちら、と覗いた青空。寒さが身を刺す。
それでも少なくとも正月まで、俺の居場所はあるかもしれなかった。



(了)

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