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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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恐怖




灰皿に置いた煙草から立ち上った煙が、染み一つない板天井に登っていく。
俺は寝そべったままそいつを見ながら、次の一本に火をつける。


来るべき対戦の日――。

おそらくは、血液を賭ける麻雀になるのだろう。
生命が抜き取られ、死に向かう恐怖に相対する。

諦めや痛み、それが人を死に向かわせることがある。
死んだ方がまし、という責め苦を負わされれば、発作的に舌を噛み切ったり屋上から飛び降りたりもする。

しかし、この勝負の真に恐ろしいところは、苦痛がないところだろう。
あの男……平山の外傷は注射針一本だった。

採血されるものは、忍び寄る死から逃げることも、自暴自棄に突っ込むこともできない。ただ、じっと座して、最後の瞬間まで死に向きあわなくてはいけないのだ。

そう、その発想こそが――鬼っ……!

だというのに俺はと言えば、どこかでこの勝負に胸が高鳴っている。
救いようがない――。


俺は手を伸ばし、吸いかけの方を灰皿でとんとんと叩く。


――そういえばあいつは。
命が惜しい人間が、なぜあんな無謀なことに巻き込まれたのか。

金なのか。


身の丈を超えた金をどうこうできるタマじゃない。安岡さんが言っていたように、口車にのせられたか何かか。
まあ、多分。納得などできなかっただろうな。

白い髪を振り乱し、激昂する様子が目に浮かぶ。不謹慎だろうが、思わず口が緩む。


それでもやはり……。
無念だったのだろうか。


さっきの吸殻が最後の灰を落とした。静かな部屋には、そんな音さえ響くようだ。


死者はもう何も教えてくれない。
だからこっちはあれこれ考えるしかない。不利な勝負だ。

いや――。
死んだヤツには勝てない、と思う。



「ん」

廊下に人の気配。仰木組の三下だろう。

「失礼します」

俺が黙っていると、音もなく障子が開いた。

「アカギさん、お食事です」

そうだ……、体力はできるだけつけておきたい。

「ああ」

答えてから吸いかけを口に持って行き、しばらく目を閉じた。


果たして俺は――キレイに死ねるのだろうか。



(了)
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