◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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仕事が終わり、誰もいない部屋に帰る。
(今日も充実した一日だった。……本当に)
明日の業務に差し支えない程度のビール。
帰宅途中で買ったつまみと夕飯。
(もうくたくただ)
だが、仕事をしていれば当り前だ。単調に繰り返される日々? いや、そんなことはない。自分だけじゃない、誰だってそうだろ? 日常を積み重ねてこうやって生きていく。
(――それが俺の選んだ人生)
明日だって大事な会議がある。そう、大事な。人生とか、そんなことを考えてる場合じゃない。大切なのは明日のことだ。
煙草に手を伸ばす。仕事をしているときには単なる精神安定剤替わり。だが一人でこうやって紫煙をくゆらせていると、何かを思い出しそうになる。何かとても熱い何かを――。
(くだらない)
答えは出た筈。そう、答えはもう出ている。それがこの生活。
ギャンブルなど、まともな大人だったら見向きもしない。
ましてやそれに依って生きるなど……。そんな雑念が浮かぶのは、仕事に集中出来ていないからではないか。
もっと考えることがあるだろう。他に大事な……大事なことが……。
(――じゃあ何故、俺は毎日酒を飲むのか)
意識が濁る。アルコールが神経を攫う最初の一撃。体力は限界。それに乗ればすぐに眠れる。
そうだ、今日はもう精一杯やった。
もう考えるな。
考えたくない。
何も――。
何も。
行き場を失ったタバコの煙が部屋に充満する。
それをぼんやりと見上げながら、灰皿で揉み消す。
空気の入れ替えをしよう、しなくては、と思ったところで意識が途切れる。
――目覚めれば朝。
既に朝食を食べる余裕はなかった。
急いでシャワーを浴び、身支度を整える。替えのワイシャツがなかったので、昨日のものをもう一度着た。家を出る。
タバコに火をつける。煙は朝の光に混ざって、空に昇っていく。追い抜く女性が手元の吸い差しを迷惑そうに睨んだ。慌ててコンビニの前の灰皿に煙草を落とす。たまった水にじゅ、と火が消える。
それから、自販機で缶コーヒーを買う。
口の中に残った煙草の匂いをコーヒーで流し込み、井川は駅に向かった。
了
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