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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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「野良猫」UPいたしました

サイトの方に、一連の仲井×治、大晦日編のお話をまとめました。
多少、加筆修正しましたので、こちらのログとはまた違った面を楽しんでいただければ幸いです。

しかし……。
このやり方(ログ貯めて後でまとめ方式)はラクだなあ。

推敲とか修正がすごく好きなんで、なんだか自分に向いたやり方という気もしている。
でも、あらためて読むと、これまでとテンポが違う気もするし。
ノリとイキオイで書く方式は、なんだかんだと時間かかるし。
まあ、良し悪しですね。

とにかく、継続は力なりということですな。


拍手いつもありがとうございます!
以下返信です。

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つづきはこちら

帰還



――深夜。
仲井のアパートの前にやってくる。今日も明かりがついていない。

(まだ戻ってないのか)

遠くから確認は出来ていたものの、つい近くまで来て、チャイムまで押して確かめてしまう。どこか地方に用があるということで、仲井はここ数日留守だった。
これまでも、仲井がしばらく店に顔を見せないことなど度々あったのだが、年末から正月にかけて、ずっと一緒にいたせいなのか、どうしているのか気になってしょうがなかった。

(つまらないなあ)

軽くため息を付き、自分の家に戻ることにする。昨日も一昨日も、ムダ足を運んだだけだった。――が、今日はそうではなかった。

「――あ」
「ん?」

嗅ぎ慣れた煙草の匂い。家主が帰ってきた。

「仲井ーっ!」

思い切り抱きつく。

「治はん? ど、どしたと?」

びっくりした仲井は治の肩に手をかけた。

「もう、どこ行ってたんだよ! 俺、寂しかったんだぞ」
「どこって……」

いつもよりは大分高レートの勝負。まあ半分は人数合わせのようなものだったのだが、さほど腕の立つ面子ではなかったとのこと。

「駅から遠くて、参ったばい」
「――で?」

仲井は治を見てにやりと笑う。

「勝った」
「そっか、おめでとう」

ほっとした顔を見せる治。そういった麻雀は危険なこともあるということを、当の仲井から聞いたことがあったのだ。

二人は至近距離で目を合わせる。
治はそのまま顔を寄せようとする。しかし、仲井はかろうじて押し止める。
既に深夜を廻っている時刻。それでも往来には人の目もある。口に煙草をやりながら仲井は言った。


「ま、とにかく中、行こうたい」

治はこくんと頷く。

「――で、お土産は?」
「は? お土産って……。そんなヒマあるわけなか」
「なんだよーっ」

甘えるように言う。もちろん、期待はしていなかったのだが――。
仲井が鍵を開け、二人は部屋に入った。


(つづく)


あとがきあります

つづきはこちら

留守番



「いらっしゃい」
「世話になるよ」

治の雀荘に、見知った顔が何人かと連れ立って入って来た。
席につこうとした男に、後ろから背中をつつき、こっそりと囁く。

「なあ、仲井は?」

この男と仲井はイカサマの『ぐる』である。一応、治の店では表立った悪さを禁じているが、仲井と通じていることはあくまで内緒なのだ。


「あれ、知らないの? 今やつ、遠征中よ」
「そうなのか?」
「どっか南の方行くって」
「――ふうん」

表情が少し曇る。仲井と治とのことは、常連にはそれとなく通じている。男はからかう口調になった。

「なんだ店長、そんなに寂しいなら、俺が慰めてやるよ。くくく……」
「ばーか、言ってんなよ」
「だって、顔がひきつってるもの」
「この顔は生まれつきだよっ」

軽口であしらいつつも、仲井が近くにいないという事実は、治を本当に寂しい気持ちにさせる。 おしぼりを持って行き、飲み物の注文を受けながらぼんやり思う。


(どうしてなんだろう)

お互いに、別の道を行く二人。
仲井は治のやることなすこと、いつも細かく言うのだが、自分のやっていることについてはあまり語らないし、治も聞こうとしなかった。

住んでいるところは知っている。しかし、それだけだ。年すら知らない。会って話す内容は、大抵麻雀のこと。


(そんな恋人ってないよな)

本当に。
自分は仲井のなんなのだろう。仲井にとって自分はなんなのだろうと思う。

そばにいれば、体を重ねていれば。
余計なことは考えずに済むのに。


(う~ん。もしかして俺、仲井が心配なのか……?)

自分の気持ちを言葉に置き換えようとするが、どうもうまくいかない。

(俺頭悪いのに……あんまり……悩ませるなよな……)

治は、ついに溜息をついた。

「――あ、そうだ」

ヤカンに水を汲み、カウンターの花の隣に置く。
仲井がこの店に持ってきたものだった。後で聞いたところ、大勝ちしたご祝儀に持ってきてくれたとのことだった。

枯れた花を摘むと、少しだけさっぱりする。それから根元にちょろちょろと水をかける。

(今度もお土産……持ってこなかったら承知しないぞ……)

治の口元は、少しだけ緩んだ。



(了)




赤いネオンが流れていったのを最後に、車窓の外には何も見えない。人家の明かりもないということは、畑か田んぼでも広がっているのだろうか。暗い窓には自分の顔が映る。


仲井は地方の好事家によって開かれる賭場に向かっていた。毎日雀荘に入り浸っていれば、時には高レートの勝負へ声がかかることもある。
ヤクザ連中が混じることもあるし、もっとタチの悪いやつらもいる。後ろ盾のない仲井にとって、そういった面子と打つ危険は百も承知だが、身一つの気軽さで、呼ばれればどこへでも行く。
大抵は金でカタがつく話のわかる連中だが、血の気の多い者はそれではきかない。

しかし、そんなのは範疇だった。
もちろん仲井とて命は惜しい。少々危ない橋を渡るのは仕方がないが、兎にも角にも命と金。それさえあれば、なんとでもなると思っていた――これまでは。


深刻な己の顔を見れば、思わず笑いがこみ上げる。

(――大仰やな。まるで死地にでも赴くようたい)


自嘲的に嘯くが、自分でも気づいていた。
勝負に対する心構えがまるで違う。

決着のその先に。
帰りたいのだ。勝って。
あの男のもとへ。

また一つ、自分は欲深くなったようだ。



窓の向こうには、再び明かりがちらついてくる。
自分の顔がぼやけたと思った時、のんびりした声のアナウンスが聞こえた。
もうすぐ到着だった。



(了)

恐怖




灰皿に置いた煙草から立ち上った煙が、染み一つない板天井に登っていく。
俺は寝そべったままそいつを見ながら、次の一本に火をつける。


来るべき対戦の日――。

おそらくは、血液を賭ける麻雀になるのだろう。
生命が抜き取られ、死に向かう恐怖に相対する。

諦めや痛み、それが人を死に向かわせることがある。
死んだ方がまし、という責め苦を負わされれば、発作的に舌を噛み切ったり屋上から飛び降りたりもする。

しかし、この勝負の真に恐ろしいところは、苦痛がないところだろう。
あの男……平山の外傷は注射針一本だった。

採血されるものは、忍び寄る死から逃げることも、自暴自棄に突っ込むこともできない。ただ、じっと座して、最後の瞬間まで死に向きあわなくてはいけないのだ。

そう、その発想こそが――鬼っ……!

だというのに俺はと言えば、どこかでこの勝負に胸が高鳴っている。
救いようがない――。


俺は手を伸ばし、吸いかけの方を灰皿でとんとんと叩く。


――そういえばあいつは。
命が惜しい人間が、なぜあんな無謀なことに巻き込まれたのか。

金なのか。


身の丈を超えた金をどうこうできるタマじゃない。安岡さんが言っていたように、口車にのせられたか何かか。
まあ、多分。納得などできなかっただろうな。

白い髪を振り乱し、激昂する様子が目に浮かぶ。不謹慎だろうが、思わず口が緩む。


それでもやはり……。
無念だったのだろうか。


さっきの吸殻が最後の灰を落とした。静かな部屋には、そんな音さえ響くようだ。


死者はもう何も教えてくれない。
だからこっちはあれこれ考えるしかない。不利な勝負だ。

いや――。
死んだヤツには勝てない、と思う。



「ん」

廊下に人の気配。仰木組の三下だろう。

「失礼します」

俺が黙っていると、音もなく障子が開いた。

「アカギさん、お食事です」

そうだ……、体力はできるだけつけておきたい。

「ああ」

答えてから吸いかけを口に持って行き、しばらく目を閉じた。


果たして俺は――キレイに死ねるのだろうか。



(了)

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