◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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どこかでアラームが鳴っている。
鳴っている。
鳴っている……。
鳴り止んだ。
……。
……。
……。
ぽたり。
シンクで水滴が垂れた――らしい。
やけに神経に障るその音が耳について、俺はうっすらと目を開ける。
時計を見る。
……。
……。
……。
――だああああっ! ヤバイっ!!!!
遅刻だーっ!!!!
焦ってももう遅い。
今からどんなに急いでも三分は過ぎる。俺はあっさりと諦め、再び目を閉じ、考えを巡らせる。
これまでの経験からすると、遅刻の時、バイト先から店長の電話がかかってくるのは就業の五分前。時間がずれたとしても、せいぜいその前後一~二分である。
店長からだと思うと、電話の音さえ聞きたくない。だから電話の前に家を出ることにしよう。そうすれば、説教されるのは店に着いた時の一回で済む段取りだ。
だから……逆算すると……あと十五分。
あと十五分――寝られる。
俺は一度だけ体を伸ばす。
はみ出た足先をもう一度、ぬるま湯のような布団の中に入れるときの快感を堪能する。
しょうがないだろ、春眠暁を覚えずっていうくらいだし――。いや、まだ春には早いが。 ある意味ゼイタクだよな、二度寝の幸せは。
そういや、そんな言葉なかったか?
朝寝は値千金とかなんとか……違ったかな。
俺はこうしている間に、どんな金持ちでも届かない贅沢をしているってわけだ。
はあー……。
このまま……世界が終わればいい。
そうすれば遅刻の言い訳を考えなくて済む……。
ぽたり。
台所だろうか。また水が垂れた。
静かな部屋に響くその音は、そのまま深く深く――地下に吸い込まれていくようだった。
いや、違う。
もっと近く。
俺の近く。
俺に溜まっていく。
そう、まるで。
『希望の船』で束の間吐き出した澱が、自分の中に再び溜まっていくようだ。
とろけそうな温もりの中、心の奥底だけが、冷えていくのを感じた。
――くそっ。こんなハズじゃねえのに。
俺は奥歯を噛み締めた。
(了)
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