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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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練習

シモネタあり・軽め




「お前さあ……」

立ったまま煙草に火を点け、池田が聞いた。


「セックスとかもう知ってるのか」

突然の質問だった。
一瞬、なんと答えていいものかわからなかった。涯が黙っていると、池田は窓の外に灰を落とした後に、振り向いた。


「どうなんだ」
「え――。ああ、はい。一応。学校で」
「学校だぁ?」
「保健体育の時間にですよ」
「そんな勉強あったか?」

とりあえず、涯は学校で教わった知識を披露する。

「あ、あと、コンドームの付け方とかも――ビデオで」
「えぇっ! そんなことも教えるのか……今のガキがませてるわけだよ」

質問の意図は見えないが、池田がびっくりする顔を見るのは面白かった。
ただこうやって、『普通に』会話できる相手など涯にはいなかったのだから。


利害関係。

池田と涯の関わりはその一言に尽きる。
これまで全てが押し付け、一方的だった涯と世間。
そこに空いた風穴が、この池田という男。

確かに素性は怪しいのだが、涯を一人前として――利害を共にするものとして認めてくれた、初めての人間なのだ。


口は悪いが、涯が一人で暮らし始めてからも、ときどきふらりと現れる。これまでも、表面的な会話しかしたことはない。それが気楽だった。――だが。


(なんで急にそんなことを)

「涯」

疑問に応えるように、池田は言った。

「この仕事は危険なんだ」
「わかってます。大丈夫、俺、強いですから」
「ばか、そんなの問題じゃねえんだ、ヤクザ相手にはよ。それこそ、麻酔でも嗅がされて拉致された日にゃ……」

池田は言葉を切った。

「やられちまう」
「やられる? ――殺されるってことですか」

真面目な顔の涯。池田のサングラスの奥の目が少し緩む。

「いやいや、そこまで無茶はしないと思うがな。つまり、男だろうが性の対象になっちゃうってことだよ」
「性の対象……?」
「早い話が、ケツの穴にチンコ突っ込まれるんだよっ!」
「えっ?」

池田は目を逸らして煙草の続きを吸う。

「えええぇっ!」

今度は涯の方が、たっぷりと驚く番だった。


「だって……、そんな――嘘でしょう」
「そういうの聞いたことねぇのか?」

涯には初めて聞く事実だった。例えば男が襲われるという話は、痴女?に、無理矢理射精でもさせられるのかと思っていた。そればかりではなく、さっき自分が説明したような手順で、男が――男に……? そんな辱めの方法もあるというのか。

そして、池田が憂慮しているのは、つまり、自分が。
まさにそういう危険にあうかも知れないということなのだ。

「だって――無理でしょう絶対」
「無理矢理だろうがなんだろうが、いたぶることにかけちゃ、奴らはプロじゃねえか」
「そう、ですけど」

混乱に不安が混じる涯の顔を見て、池田は笑った。


「だからよ。今日から時間がある時に、俺が鍛えてやるから」
「鍛える? 拳ならオレ……」
「そうじゃねえ、こっちよこっち」

自分の尻を叩く。

「え」

涯の混乱は更に混迷を極めた。





(つづく――かも)
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