忍者ブログ

スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




川沿いの道をぶらぶらと歩く。冬晴れの暖かい日だった。
仲井は足を止めた。
土手に寝っ転がっている白髪には見覚えがあった。
思わずそばに降りていく。歩くたび、枯れ草混じりの雑草が乾いた音を立てる。


「アカギ……はん」
「ん?」

昼寝の主は薄目を開ける。

「仲井か」
「へへ……」

仲井はアカギの隣に腰をおろした。ポケットの煙草を探るが、あいにく切らしていた。アカギが差し出した一本をもらう。

「すまんたい」

そう言って、自分とアカギの分の火を点ける。

「元気そうやな」

アカギは何も言わずに寝そべったまま煙を燻らす。
遠い川面で魚が跳ねる。二度、三度。
しばらく仲井は無心で眺めていた。

かつて。
自分をどん底にたたき落とした男の隣にいることを、束の間忘れていた。

アカギは突然言った。

「治は――元気か」
「えっ」

必要以上に大きな声を出していた。いつの間にかアカギは自分をじっと見つめている。この男はどうして、何でも見透かしたような瞳をしているのだろう。


「……あ、ああ、元気たい」

思い出したように煙草を口にやる。鼻から煙を吐き、それから仲井は聞いた。

「――会わんのか」
「ん?」
「治はんに」

アカギは再び黙る。聞いているのはこっちの方なのに、勝手に心がざわめいていく。息が詰まるかと思った瞬間、アカギが答えた。


「用がないからな」


ここに居ない人間のことを何時までも話題にするのは、卑怯な気がした。それでも、仲井は言葉を継がずにはいられなかった。

「治はんは――会いたがってたばい」
「あん?」

仲井の一種必死な表情をちら、と見て、アカギはのんびりと煙草を吸い込む。それから、目をつぶって煙を吐き出し、答えた。

「あいつは、そんなこと言わねぇだろ」

川面には、大きな川鵜が舞い降りる。光を反射する水面にあって、まるでそこだけ真っ黒な色を塗ったようだった。羽ばたく音がここまで聞こえてくる。仲井は小さくつぶやいた。


「そうだったかも――しれんたい」

無意味な敗北感。
自分は何を期待していたのか。この男に何と言って欲しかったのか――。


「はぁ~……」


仲井は大きくため息をつき、アカギと同じように寝転がった。
急に視界が開ける。
雲ひとつないどこまでも続く天蓋。
まるで空が落ちて来るようだった。

――この青は自分には眩しすぎる。


「目がくらみそうたい。あんさんは――いつもこんなものを見とるんか」

仲井が言うと、アカギは目を開け、空の奥底を見据える。

「フフ……まあ、そうだな」


煙草を吸い終えた仲井は立ち上がる。それから取り出した札を手渡す。

「煙草代」
「ああ――悪いな。文無しだったんだ」

仲井は呆れたようにアカギを見る。

「ホンマに、かなわんな――あんたには」


雑草を踏み分け、土手を登る。仲井はもう一度アカギの方を振り返る。
白い髪が揺れ、それから、自分の頬を暖かい風が撫でた。



(了)
PR

コメント

コメントを書く

お名前:
タイトル:
文字色:
メールアドレス:
URL:
コメント:
パスワード:   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

トラックバック

この記事にトラックバックする:

カテゴリー

最新記事

プロフィール

HN:
Indy
自己紹介:

ブログ内検索

アーカイブ

最新コメント

[09/10 NONAME]
[07/22 NONAME]
[03/31 NONAME]
[03/30 NONAME]
[05/24 Indy]

リンク

最古記事

(12/18)
(12/18)
(12/19)
(12/19)
(12/20)

フリーエリア

RSS

忍者アナライズ