◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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【ホモエロ 注意】
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「じゃ、続き。布団行く?」
「あ、ああ……」
「仲井も脱いでよ。オレも上、脱ぐからさ」
「え? ああ、せやな……」
「脱がしてやろうか?」
「大丈夫たい」
上着を脱いだ仲井は、焦る気持ちを落ち着けるように息を吐いた。横になった治の襞を広げて、あえてゆっくりと、丁寧にワセリンを塗り込める。仲井が指を滑らせる度に、治は艶かしく身を捩り、固く反り返った彼の男性自身も悶えるかの如くぷるぷると震えた。
「っ……! あっ……くぅ……」
「――やらしい体たい、ホンマに」
「な、変なこと言う……な! んっ!」
この治の豹変振りは何なのか。確かに雀荘を始めたばかりの頃に比べ、逞しくはなった。それでも、かつては処女のように自分を拒絶していた治が、ここまで素直に体を開くのは不可解。なのに、滑らかになった菊門は、つぷん、とあっさり指を受け入れる。
「あっ……ん」
生理的な拒否反応ではなく、治は明らかに官能の色を示している。仲井は確かめるように指をくねらせた。
「あ? ここがいいんか?」
「やっ、やだ……。あっ、んぅ……」
答えると同時に、「中」も誘うように締め付けてくる。
(何たい、こいつ。さっきのアレといい、ホンマは男知ってるんか)
疑念は湧く。頭は妙に冷静になっていく。が、そこで止まる程、聖人君子ではない。目を瞑りギュッと拳を握って、素直に反応する治を見ていると、昂ぶってしまうのも事実なのだ。治を抱きたい。逗留中にもずっと秘めていた衝動を手放すつもりは毛頭なかった。治の足をしっかりと開き、再度挿入を試みる。十分に解されたそこは、今度こそ仲井の勃茎を受け入れた。二人同時に息を吐く。
「んぁっ……!」
「くはっ!」
(中はギュウギュウたい……だが、入ったか)
ふと治の顔を見れば、痛みによるものだろう、涙の滲む目で自分を見上げている。ようやく手に入れた、辿り着いたという安堵による仄暗い快感が背筋を駆けた。仲井が目を逸らすと、治が不安そうに訊いた。
「入った、よね?」
「ああ」
そっけない調子で応え、再び治の両腕を押さえつけ、腰を動かし始める。
「あっ! ああっ! あんっ!」
軋むような抜き差しを繰り返し、息を切らしながら仲井は訊いた。
「痛いっ……かっ……?」
「えっ?」
それは突然だった。
「だ、大丈夫。……気持ちいい、よ」
思いがけずに見せられた笑顔に、射抜かれてしまった。
「っ……!」
契機となったのは、確かに暗い情欲だった。
なのに完全に支配したかと思った途端、治に心を乱されている。わかっている、自分が受け入れられたような錯覚に、悪酔いしているだけだろう。だがそれならそれで、この時が永遠に続けばいいなどと、夢みたいなことまで思ってしまう。重ねて仲井は問う。
「なあ」
「あっ……! あんっ!」
「何でおいと……寝た?」
二人きりの静かな部屋。だが、息遣いと淫靡な水音の響きが仲井の質問をかき消す。
「あぁっ……え? ……何?」
絶頂まで後少しというところで、仲井は倒れこみ、治に縋った。
「何でもなか」
「仲井?」
抱き合って肌を合わせていると、互いの心臓の音が混じり合い、そこから官能とは別の甘い何かに満たされていく。
(治……)
思わず心で呟いていた。すると聞こえない筈の問いかけに応じるかのように、治が言った。
「傷、痛いのか?」
仲井は応えなかった。それから、思い直したように一度雄芯を引き抜き、治をうつ伏せになるよう促す。
「こう?」
持ち上げた尻たぶをかき分けるようにして、雄芯を再び差し込む。
「んっ!」
向き合った時とは違った場所に当たるのだろう、治はもぞもぞと腰を動かし、愉悦を探しあてる。そんな動きのいちいちに煽られてしまう自分が情けない気がした。仲井は何も言わずに動き出す。
「あっ、……あぁっ! あっ!」
もう一度射精の頂を目指し、更に強く腰を押し込む。先端が痺れてきた頃、ふと、治の前を探り、固くなったそこを撫でる。
「ふぁっ?」
彼が後どれ位で達するのかは読めないが、何の意地か、自分が先に出してしまうのに抵抗があった。仲井は動きを止め、後ろから抱えるようにして治の竿を扱きだす。
「えっ? やっ、ダメ……出っ!」
今この瞬間、治の全てを、自分が握っているのだ。仲井は再び暗い情欲に身を浸す。
「あっ、イっちゃ……………ああっ!」
白濁が散る。分身がビクビクと震えだすのを確かめ、仲井は再び腰を打ち付ける。
「あっ、あんっ! あぁっ!」
嬌声が耳を擽ると、あっという間だった。仲井が達し、治の中に精を放つと、それが刺激となったのか、治の陰茎も残りの白濁を絞り出す。登り詰めた二人は突っ伏すように布団に倒れ込んだ。
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さすがに体の彼方此方が痛い。それでも心は、満ち足りたような気分に包まれていた。中空を見つめ、仲井はタバコの煙を吐き出す。
情交の後。
自分でも呆れるくらい、治に欲情していた。止まらなかった。その理由はよくわからない。
体を重ねれば、感情が通じるような気がした。一度ならず治を抱いた。何度も治の中に精を注ぐことで、自分の中の何かが薄まると思った。そして治は、その全てを受け入れてくれた。
仲井は隣の男に視線を落とす。
自分のせいで気の張った日々を過ごし、精神的にも限界だったのかもしれない。治は既に寝ている。
「計れんたい」
己の心も計れない。ましてや他人の心など。
片手で治の頬にそっと触れた。
呑気ともいえるこの表情は、仲井の知る男たちにはないもの。
勝負師にとっては毒とも言える、安穏。
「あんさんは、単なる親切でやってるのかもしれないが」
ぬるく甘い幸福は、泥のように纏わりつき、ずぶずぶと底無しの沼に引き摺り込む。
捉われたい――捉われたくない。
仮初めの満足感を押し殺すように、仲井は煙草を揉み消した。そして、呻くように呟く。
「そないに、優しく……せんといてくれ……」
仲井は両手で顔を覆った。
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ガサガサという音で目が覚める。まだ夜明け前だった。
治が目を開けると、仲井はクリーニングの済んだ服を袋から取り出しているところだった。
「あ、起きてしもうたんか」
「どうしたんだ」
「なら、丁度いい、おいはもう行くたい。――これ」
どこに持っていたのか、束になった札を折り曲げ、治に手渡す。
「なんだよ……これ? 行くって、だって怪我は」
「もう充分たい。治はんには、ようけ世話になった。感謝しとる。それはまあ、いろんな事の――駄賃たい。前も言うたやろ」
ジャケットに手を通し、仲井は背を向け靴を履く。
「おいはタダで何かしてもらうのは好かん」
「お前……!」
治は札を投げつけた。仲井の背に当たって札はばらけ、数枚がひらひらと舞った。
「金は大事にせんといかんたい」
仲井は振り返って淡々と言う。ぶちまけられた紙幣を拾い、畳のふちに重ねて置いた。
「オレはっ……お前のそういうところが! 本当に嫌だ!」
「イヤで結構たい」
今度は振り返らずに、仲井は言った。
「ほな、また来るで」
「もう来るなっ、バカ野郎っ!」
仲井は去った。ドアを開けたときに入った風が、治を撫でた。
「くっ」
金を拾いあげ、治はレジのボタンを乱暴に押す。
「ったく、なんなんだアイツは!」
(まあ……それが奴の味さ)
心に去来するアカギの言葉。
いつも周到で、しぶとくて、抜け目ない。仲井が治を計れないように、治にも仲井は計れない。そして、おそらく変わらない仲井の生き方。
治は少しの間、動かないでそこに立っていた。
急に上がった心拍数が落ち着くのを待って、それから入り口の方を見た。
(オレは)
きっと本当に、仲井はまたやってくる。
治の目を盗んでイカサマや、あこぎなことをして、強引にチップを手渡すのだろう。治は、新しい封筒に金を入れた。
(オレとあいつは違う)
金をしまい、治はレジの引き出しを静かに閉めた。何かが終わったような音が、誰もいない店内に低く響いた。
(違うんだ)
ふと治が顔を上げると、閉め忘れたブラインドから光が洩れていた。
「あ……」
雲間を照らす薄紅色の空。夜が明けようとしていた。
治は窓を開け、空気を入れ替えながら、朝焼けをしばらく眺めた。
また仲井が来たら。
また仲井が金を渡したら。
そしたら、また突っ返せばいい。
それが治の生き方なのだ。
人は互いに誰も違う線の上を生きている。しかし交わることは出来るのだ。仲井に心を開いたことは、後悔していなかった。
治はブラインドを下ろした。それから、もう一度寝るために、布団に戻った。
了
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