忍者ブログ

スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

nakai02

【ホモホモしい注意】











   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 次の朝。
 治は耳元で呻き声を聞いた。
(あっ、そうだ。仲井)
 厄介な客人の存在に気づき、一瞬で目が覚める。
 隣で寝ている仲井はうなされていた。傷による熱の為だろう。治は起き出して、氷嚢の中身を取替える。
「大丈夫か」
 冷たい水に浸し、固く絞った手拭で顔を拭いてやると、強張った顔がほんの少し緩む。こんな顔をする仲井は初めて見るように思う。
(なんかコイツって……)
 人を値踏みするような仲井の表情を思い出す。
(いつも余裕ないっていうか、崖っぷちっていうか)
 所詮は、はぐれ者なのだ。
 その日その日の稼ぎを自分で賄うしかない生き方をしていれば、人を信用して心を開くことなどないのだろう。いっしょに組んでいる仲間たちとも、もしかしたら金だけの繋がりなのかもしれない。
(でも、なんで俺なんだよ)
 麻雀の時もそうだ。こちらが聞いてもいないのに、治の打ち筋がいかに駄目か、解説する。またそれが、正論なだけに頭にくるのだ。しかし、きっと同じことをアカギに言われたら、素直に納得してしまうのだろう。我ながら現金なものだ、とも思う。
(やっぱり、馬鹿にされてんだよな。まあ、いいけど)
 頼られて悪い気はしない。昔から、人に使われやすい性質。自覚もしている。一緒にいて安心できる、それが治のよいところでもあるのだが、本人としてはやはりもっと男らしくなりたい、そんな思いもあるのだろう。
 だから、アカギについて行った。
 彼に憧れて麻雀を続けてはいるものの、ギャンブルに拠って、生きていくというのは自分には出来ないだろうとも感じている。
 治は、アカギの勝負を間近でみたことはあっても、実際麻雀で対峙したことはない。だが仲井は違う。
 ふと治は、あの勝負の時に感じていた疎外感を思い出した。仲井の目に、アカギはどう映ったのだろう。アカギにとって、仲井はどう映ったのだろう。
 それでも、自分には自分の分というものがある。だから結局今の仕事を始めたのだ。悔いはなかった。進む道は違っても、現在に殉ずる生き方――アカギのように純度の濃い生き方が、きっと出来るのではないだろうか。治はそう信じている。
(仲井は……、どうなんだろう)
 アカギに敗れ、己の分を知った仲井は、今も麻雀を続けている。
 コツコツと積み上げてきた全財産を賭けた勝負。あの時仲井は、己の出来うるありとあらゆる手段を使ってアカギに挑んでいた。いわば、人生そのものを賭けたといっていい。

 アカギの魂に触れた男――。

 昨夜のような体を張った麻雀。仲井がどんな思いで勝負に臨んだのか。仲井もきっと彼なりに、前のめりの人生を生きているのかもしれない。
「仲井……」
 居候は答えず、静かな寝息を立て始めた。治は立ち上がり、店の掃除をするために三和土に降りた。



   ◆◇◆



 営業時間中にも、時々仲井の様子を伺いながら、治は仕事を続けた。
 夜も更け、最後の客が帰った。
 奥の部屋に戻ってくると、仲井は目を開けて、じっと畳の方を見つめている。 視線の先には、空になったコップと手拭を置いた盆があった。
「目が覚めたか?」
「ああ」
 治は仲井の額に手を当てる。
「熱は下がったみたいだな。少し楽になったか?」
「……そうやな」
「じゃ、栄養取らなきゃ。起きろよ」
 ちゃぶ台を拭き、食事の用意をする。
「まだ体が動かんたい」
「だめだよ、ずっとその姿勢じゃないか。無理してでも少し起きないと、そのまま動かなくなっちゃうんだぞ」
「まさか」
「本当だよ、適度の運動はリハビリに大事なんだ。寝たきりは良くないぞ」
「しゃあないな」
 仲井がゆっくりと時間をかけて起き上がるのを、根気良く待つ。
 傷に触らないような体勢におさまったのを見計らって、粥を渡す。
「何たい、これじゃ力がつかんと」
「ゼイタク言うな。ずっと寝てたんだから、これでいいんだよっ。卵も入ってるんだぞ! あと、この化膿止めも飲めよ」
「はいはい、わかったと」
 どこまでもずうずうしい仲井にあきれる反面、あれこれ言うのが、少し楽しかった。会社の寮を出て、しばらく一人暮らしだった治は、まるで家族の会話のようなやり取りを懐かしく感じる。普段は気の弱いところもある治が、仲井が相手なら何故かぽんぽんと文句も言えるのも不思議だった。

 自分も一緒に食事を取り、食べ終わった二人分の皿を持って、厨房へ向かおうとする。
「次はハムでも入れるか……」
 ぶつぶつと呟く治に、仲井は声をかけた。
「治はん」
「ん? 何だよ」
「ご馳走様」
「ああ、うん」
 治は笑った。



続く……
PR

コメント

コメントを書く

お名前:
タイトル:
文字色:
メールアドレス:
URL:
コメント:
パスワード:   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カテゴリー

最新記事

プロフィール

HN:
Indy
自己紹介:

ブログ内検索

アーカイブ

最新コメント

[09/10 NONAME]
[07/22 NONAME]
[03/31 NONAME]
[03/30 NONAME]
[05/24 Indy]

リンク

最古記事

(12/18)
(12/18)
(12/19)
(12/19)
(12/20)

フリーエリア

RSS

忍者アナライズ