◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。
◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意
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気がつけば濃密な闇を見ていた。
(暗い……)
そこに在るのは押し潰されそうな不安。
耐えられない。逃げ出したくてたまらなかった。
(いやだ……早く……どこか……)
すると暗褐色の中、白い色が浮かび上がる。
(あ……)
懐かしい白銀の光。その光を見ていると、とても安心する。
それなのに、光は次第に闇に飲み込まれていく。
(やめて、消さないで……)
輝きが小さく、小さくなっていき、そして――。
「アカギさんっ……!」
目が覚める。
ここは――布団の中。
「大丈夫か」
横で寝ていた仲井はいつも通りの声で言う。
「あ、あれ? 俺……」
「うなされとったばい」
「えっ?」
「アカギはんの……夢見たんか」
夢の内容は忘れている。しかし、そう言われてみればそうだったか。叫んだ自分の声が耳に残っている。治は仲井にすがるようにして口を開いた。
「俺……なんでっ……あの人は……独り……」
既に霧散した夢を説明しようとしても上手くいかない。
彼の孤独――。
寄り添えた日々と決別。
言葉に詰まる治。
「――ええって」
仲井にそう言われると、混乱が少しおさまる。涙の残る目元を指でなぞられた。
「なんや、泣いとったんか」
「う、うるさいな」
ばつが悪くなり、顔を逸らし目をつぶると、思い切り抱きしめられる。
「……っ? 仲井……苦しい」
しかし仲井は力を緩めない。
「――仲井?」
「アカギはんは……大丈夫たい」
仲井にはわかっている。アカギの破滅の匂い。
おそらく、治も本能的に死へ向かうアカギの姿を感じているのだろう、と思う。
しかし、そのことは言っても仕方がない。
だから、ただ言った。
「あん人は負けるような人やないたい――知ってるやろ」
治は仲井の腕の中で頷く。ふわっと力が緩められ、頭をなでられる。
「よしよし、ええ子たい」
「子ども扱いするなよ……」
言葉端に元気が戻るのを聞き、仲井は体を離して、治を隣へ促す。
「じゃあ、ほら、さっさと寝るたい」
「うん……」
治は元の位置に戻る。そして仲井の方を向いて聞いた。
「仲井ってもしかして……優しい?」
「なっ、何言っとう……」
「ありがと」
微笑みながら呟き、目を閉じる。
何か言いたそうにしていた仲井だったが、治が目を開けないので、そのまま仰向けに直った。
しばらく天井を見つめ、枕元の煙草に手を伸ばしかけて思い直す。
それから隣から寝息が聞こえてくると、自分も目を瞑った。
(了)
※あとがきあります
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「さて、そろそろ夕飯作るか」
広げた帳簿を片付け、治が腰を上げる。
新聞を読みながら煙草を吸っていた仲井も、後を追い厨房の方に行く。
「そういや腹減ったたい……」
「仲井ってさ、自分じゃ料理しないの?」
「男がそんなんできるわけなか――と言いたいところやが」
治の方をちら、と見る。
そんな主張は全く無意味なことに気づく。
「――まあ、作れと言われれば」
「ふーん」
治はニンジンを手渡す。
「じゃ、皮むきお願い」
「ああ」
治のところに転がり込み、年を越そうと目論んでいた仲井。治は拍子抜けするくらいあっさりと受け入れた。まるでいっしょに過ごすことが当然のように――。
一人なら面倒で、絶対に台所に立つことなどしなかっただろう。が、こういうのも案外悪くない、と思う。
治は横で、しきりに目をこすりながら玉ねぎをモタモタ切っている。
厨房は狭いから、仲井までなんだか鼻奥がツンとしてくる。
器用に包丁を使いながら、仲井は尋ねる。
「で、これ。何ができるたい」
「カレーだよ」
「カレー?」
「うん」
確かにこの手順はカレー以外の何ものでもなかった。しかし。
「大晦日にカレーて……」
「なんだよ、カレーは体にいいんだぞ。イチローだって毎日食べてるんだから」
「――イチローって誰たい」
「……さあ」
※注:このお話の舞台は昭和40年代です。
「……」
「……」
……。
治はガスに火を入れる。
「肉いっぱい入れるからねーっ。仲井、好きだよな?」
「あ、ああ」
「俺も好きだから、よかった」
そんなことでも嬉しそうに言う。仲井は掠めるように治の顔を見た。
◇◆◇◆
「……なんちゅーか」
夜更け。
食後の一服をしながら、仲井が素直な感想を述べる。
「あんまり年越しって気分やないたい」
「そうかなあ」
治はあまり気にしていないようだった。
「一応、そばは買ってあるけど? カレーそば、する?」
「いや、いいたい……」
「きっと明日の方が美味しいよなー」
(元旦もカレー……)
仲井は複雑な気持ちになるが、果たして、これまでの正月はどうだったか。
たいした記憶がない。
常に人を蹴落とすことを考えてきた自分に安穏は無縁。ここまでのんびりした気持ちで年を越すことなどなかったかもしれない。
――除夜の鐘が聞こえてくる。
煩悩は消えることはなさそうだが、殺伐とした気分は束の間、忘れられた気がする。
「じゃ、お腹もいっぱいになったし」
治は立ち上がった。
「初詣、行こうよ」
「え」
「ほら、早く」
「あ、ああ」
手を引かれ、腰をあげる。
神頼みなど性に合わないが、今なら何か願ってもいい――。
仲井はそんな気持ちになった。
(了)

(ラブシーンあり・がっつり)
つづきはこちら
年末の雰囲気は苦手だ。
そわそわと、追い立てられる気分になる。
博徒だのギャンブラーだのといえば様にもなるが、要はその日暮らしの素寒貧なのだ。
全財産を賭けた勝負に破れ、実際に文無しになったこともある。
そして更に苦手なのが正月だった。
自分もツケの支払いなどに追われるが、金の動きの多い暮れは、稼ぎ時でもある。
しかし、さすがに正月は、頼みの雀荘も休みのところが多い。現在とは違い、食料の調達一つとっても、男所帯には悩みのタネである。
(んー……やっぱり――行くしかなか)
どっちみち治はずっと店にいるはず。
都合のいい時だけふらりと立ち寄る。治は嫌な顔をしないし、一緒に食事をするだけでも、前にも増して楽しそうだった。だが、それが――いたたまれない。
(まるで……野良猫たい……)
自虐的な連想が頭を掠める。。
以前の自分はそんな風に感じただろうか。治に惹かれているからこそ、後ろめたいのかもしれなかった。
――欲得尽くの計算半分でドアを開ける。
「あ、仲井、いらっしゃい」
懸想相手は、掛け値なしの笑顔で出迎えてくれた。
まいったな、と思う。
了
以下あとがき(私信?)です
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