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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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薄闇

エロシーンあり・軽め
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店のドアが開く。
コーヒーの香りが漂ってはいるが、「いらっしゃい」と出迎える声が聞こえない。

「――ん、なんやおるやないか」
「あー、お早う……」

治は待機客用のソファに腰掛け、真剣な表情で何やら読んでいる。


「何読んどるたい――『よくわかる確定申告』?」
「うん、もう少しだからちょっと待ってて」
「なんや社長さんも大変たい」
「んー……」

集中している治は生返事。手持ち無沙汰な仲井は隣に腰掛け、新聞を開く。
時折ちらちら本を覗いてみる。

「ややこしそうやな」
「ん……一度書類作って……分からないとこだけ調べてる……」
「ふーん」

治は言いながら仲井に寄り掛かる。仲井は片眉をぴくりと上げたが、そのままスポーツ欄に目を落とす。

「仲井……」
「あ?」
「コーヒー入ってるよ、自分で飲んで」
「あ、ああ――まだ、いいたい」
「そう?」



静かな店内には、コーヒーメーカーの蒸気の音と、治のページを繰る音だけが響いていた。








「いらっしゃい――仲井か、早いね」
「おう」

開店前の治の店。いつものようにふらっと仲井が入ってくる。
レジに小銭を入れていた治は、手提げ袋を目ざとく見る。


「何、それ?」
「土産たい」

がさがさと仲井がビニール袋から取り出したのは、小さな花をつけたプリムラ。

「へえ、可愛いじゃない」

治は仲井の隣にやってくる。

「でも――植木鉢かー」
「なにたい、気に食わんか」
「いや、そんなことないけど……よく言うじゃない、お見舞いの時、『根付く』から良くないって」


治はカウンターの窓側、光の当たる場所に鉢を置いた。


「アホかい、客が根付いた方が商売繁盛で結構たい」
「あ、そうか」

仲井はカウンターに腰掛け、煙草を取り出した。


「で、なんて花なの、これ」
「何やったかな、西洋の……サクラソウとかなんとか」
「ふーん」

さしたる興味を引かれないような調子で生返事をする。
仲井は、紫煙を燻らせはじめる。


「でも――意外だな」
「何が」
「仲井が……花を買うなんて」

治は怪訝な顔つきになる。

「まさか――、何か企んでる?」
「な、なに人聞きの悪いことっ! あんさん、どういう目で人を見とるばい。この店、殺風景すぎるたい、おいがちょっと気を効かせてやな……」

実際は、夕べ役満をあがったご祝儀で、とりあえず目についた花を買ってみたという顛末である。

「えぇ? そうかなあ。他の店だってこんなもんでしょ……でもさ」
「ん」
「きっと女性のお客さんは喜ぶよね、どうもありがとう」

仲井の方を見て微笑む。

「あ、ああ……」

しばらくゆっくりと煙草をふかす。吸い口の際まで吸ったところで揉み消し、告げる。

「ほいじゃ」
「ええ~っ? もう行っちゃうの? 来たばっかりじゃないか」
「おいは忙しいたい、また来るで」
「――うん」


馴染みの雀荘に向かう途中、花を買った店の前を通りかかった。
ふわっと風が抜け、色とりどりの名も知らぬ花たちが優しく揺れる。

確かに、あの店には花なんか要らないかもしれない――。

そんなことを考え、仲井は一人赤面した。



(了)

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