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中に通されたのは初めてだった。
笑ってしまうほど何もない部屋。しかし、床に直置きされた大量の本と雑誌に圧倒される。
「――すごいな、これ全部読んだの?」
「当り前たい、読まない本買ってどうする」
「それはそうだけど」
多くが麻雀関連のものだが、大衆紙もたくさんあった。
そう言えば治の店に来た時も、ヒマさえあれば牌をいじりながら新聞を読んでいる。
「仲井って雑誌とか新聞好きだよね」
「好きっていうか」
仲井は吸っていた煙草を、机の上の灰皿で揉み消しながら言った。
「何するにしても、情報は大事たい」
「ふーん」
「でもまあ、麻雀は実際打つしかなか。本じゃ基本のキしか身につかん」
「うん……」
「――少し整理せんとなぁ、これ」
ぶつぶつ言いながら、床にばらけていた何冊かを積み上げる。
その横顔を見ながら、治はなんとなく、目が覚めたような気分になる。
(やっぱり、仲井ってスゴイんだ……よな)
仲井と親密になり、近づいたと思っても、それは錯覚。自分の手の届かないレベルで、彼は更に研鑽を続けているのだ。
そして、その仲井でさえ凌駕する存在も、この世には存在する……。
特に深い考えもなく今の商売を始めた。もちろん、治は治なりに、毎日一生懸命勤め上げてはいるつもりである。しかし、日々麻雀に真摯に取り組む多くの輩と接していると、やはり自分はどこか甘いのだろうか、と考えてしまう。
正座を崩さず、拳を膝の上で握ったままでいる治を、仲井は訝しむ。
「――どした? 急に静かになったばい」
治は黙っている。
「腹でも減ったか? ん~、つまみくらいしかないたい」
コップと焼酎を机に置き、仲井は治の隣に座る。
「――仲井」
「ん」
自分を呼ぶ声に熱を感じ、仲井は顔を傾げて唇を重ねようとする。しかし。
「お、俺さっ!」
切迫したような口調に、仲井は寸前で顔を離した。
「?」
「俺ってさ――何なの?」
「は?」
「アカギさんに憧れて、職場飛び出して、でもやっぱり付いていけなくてっ」
仲井は黙って聞いている。
「成り行きで――店始めて、半端に麻雀と関わって、仲井と……仲井と……」
「おいと?」
治は口をつぐむ。
「なに、はっきりせんたい」
「だって」
「それに半端にってなにたい。おどれ、そんな気持ちで店構えとんのか」
「そうじゃないけど……」
「じゃあ――」
治は、振り絞るように言う。
「――ときどき、俺なんかが、ここにいていいのかって思うんだよ! それに」
治の声は小さくなる。仲井は眉間に皺を寄せ、険悪な表情になる。
「俺って……仲井のなんなのかなって――」
「ああ?」
(つづく)
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