◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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「うー今日もひどく濡れる雨たい」
愚痴りながら扉を開ける。
目に飛び込んできたのは、赤みがかった薄紫と、水色に近いこんもりとした花。紫陽花を数本、治がガラスの器に無造作に刺している。欝陶しい外の天気と地続きのような殺風景な店内だったが、そこだけは瑞々しい色を湛えていた。仲井は近づいて言った。
「お、アジサイかい」
「近所の人がね、持って来てくれた」
「ほー。家の中で見るのもまた一興たい」
「そうだね」
マッチに火をつけながら、客待ち用のソファに腰掛ける。
「治はん」
「なに?」
「紫陽花がなんでいろんな色になるか知っとるか」
「お前さ――俺のこと、バカだと思ってるだろ? そのくらい知ってるよ! 生えてる土の成分が……酸性とか……アルカリとか……なんかそういうのだろ? ――あ、だけど」
「ん」
仲井が目を細めてひと吸いすると、治は仲井をまじまじと見つめていった。
「じゃあさ、同じ一本でも色が違う花が咲くのはどうして? これも同じ木なんだってよ」
「あ?――ああ……それは」
「それは?」
「……ああ」
「なに?」
「多分」
「多分?」
「紫陽花の……体調……とか?」
「なんだよそれ、仲井もよくわかってないんだろ」
「うっ……」
「でも体調か……そういうのあるかもな、うん」
心得たように呟く治を一瞥し、仲井はタバコの続きを吸う。
□■□■
手洗いに立った時、鏡がふと目に止まった。
勿論、以前の自分の顔など覚えていない。が、安寧に根ざした自分は、今どんな顔をしているのだろう。見るのが恐ろしくなり、仲井はすぐに目を逸らした。
(了)
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