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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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灰色





「おい治っ!! タバコ買って来い!」
「ええっ? この雨の中をですか?」
「関係ねえだろっ、切れちまったんだからよ。第一、もうそんなに降ってねえよ」
「勘弁してくださいよお、俺、金ないんですから……知ってるでしょ」

口答えが気に食わず、思わず声を張り上げる。

「何だと? 先輩の言うことが聞けないわけじゃないよな?」
「ぐっ……」

目に涙を溜めて、すぐ半べそになるくせに、そこから先――本格的な泣き顔は見たことがない。さすがに小さい子供ではないのだから当然ではあるが、それがどこかもどかしかった。

(気に入らねえ……!)


自分がなにに苛立っているのかよくわからない。
中途半端に弱った顔をする目の前の後輩なのか。
単調で色気のないこの生活なのか。
それとも弱いもの虐めで鬱憤晴らしをしている自分になのか。

治はしぶしぶ立ち上がる。

「でも、俺ホントに……」
「しょうがねえ、じゃあこれ……釣りはいいからよ」

小銭を渡すとほっとするような顔をする。


「あ、ありがとうございます」

何故礼など言うのだろう。たかだか何十円のことで。
こっちは使い走りをさせているというのに。本当に馬鹿なんじゃないだろうか。
いっそ殴りつけてやれば、スカッとするだろうか。こいつは泣くのだろうか。

果て無く続く疑問を打ち切るように、地べたに這い蹲り、治が自分に許しを乞うところを想像してみるが、別段楽しいものではなかった。

「早くしろよっ」
「はい!」



自分の部屋に戻る。財布をテーブルの上に置くと、川島は、一度舌打ちをしてからごろりと横になった。

馬鹿が。たまに甘い顔見せれば、すぐに気を許すようなことを言いやがって。

やはり――あいつは金づるなんだ。

治はいいカモだった。それは間違いなかった。
そして、治より騙しやすい人間が現れたら、そいつから金をむしるだけである。

同僚たちと組んで、麻雀でターゲットから給料を巻き上げる。三人で分けるからたいした額ではないが、それでも当座の遊ぶ足しにはなる。

そうだ。――来月も再来月も、ずっとむしってやる。ずっと、ずっとだ。


雨はいつの間にか上がり、重く垂れこめた雲の切れ目から、陽光が漏れている。
そして。
空にはうっすらと虹がかかっていた。中空から霞んだ地面にまで届く大きな半円を描いている。
しかし窓に背を向けた川島が目にすることはなかった。



(了)

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