◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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【ホモエロ がっつり注意】
【弐】
「なあ、まだまだ牌は残ってる。次にオレが当てたら、アンタどうするんだ?」
「えっ」
矢木が屈辱に震えながら座していると、再び席に着いたアカギは、返事を待たずに牌をめくる。さっきの白。
「だって、勝負は」
こんな状態でまだ続けようというのか?
矢木は困惑する。しかし、実際まだ勝負はわからない。これからアカギが全部外せば、あるいは――。
勿論アカギは容赦しなかった。
「フフ……次はオレの言う事を聞いてもらう」
続けて矢木の手牌から迷わず一つを抜き取り、目の前に突きつける。
「ほら……、これだろ?」
「おま……え、何故……。見える、のか……?」
アカギが牌を当て続けることに、矢木は恐怖を感じている。否。矢木を恐れさせるために、アカギは牌を選ぶ。
「見えるさ……アンタを追い詰める道筋が、オレには全部見えている」
アカギは静かに言った。
「――じゃあ、まずは自分で抜いて貰おうかな」
「何?」
「聞こえないのか? 自慰だよ。せんずり。ここでやるんだ」
「な……何を言っているんだ!」
「矢木さん……オレは言ったはずだ……アンタのそのプライドを貰うって」
目を見開き、無意識に手で口を覆う。
「そんな……嘘だろ」
「まさか反故にはしないよな? 仮にも博打打ちのアンタが? ククク……」
夕方といっていい時刻。宵闇がそろそろと忍び込んでくるが、部屋は相変わらず蒸し暑い。しかし、矢木が感じているのは冷え冷えとした狂気。
足を投げ出し、自分自身を握りこむ。しかし、当然ながら勃たない。
「うぅ……」
目の前で闇の瞳が見つめている。自分は一体何をしているのだという、心の声。
「ダメだ……そんな気になれるわけがない」
「しょうがねーな。矢木さん、足開けよ」
机を背に座った矢木の足の間でしゃがみこむ。
「な、何を……」
アカギはおもむろに萎えた矢木の一物を掴む。
「うっ……」
裸になって他人に急所を握られる。女相手ならこの部屋で何度もやってきたこと――の筈だ。それなのに矢木は、なぜか中学生のように緊張する。そんな反応を楽しむかのように、アカギは黙って矢木の顔を見つめる。
「……っ……」
その手の温度が矢木の分身に馴染む頃、じんわりと反応し、大きさが増す。
まるでそれを待っていたかのように、アカギはぱくりと銜えた。
「わあっ! おまえっ! 馬鹿っ!」
まさかそんな行動に出るとは思わず、うろたえる。ところが身を引く間もなく、矢木はその口淫の手管に没頭してしまう。
「お、ま……え……っ……!」
シャツ一枚で自分の前に跪く少年。その背徳的な姿は矢木を酔わせ、官能の扉を開ける。
手を沿え暴かれた蜜口に舌を這わされ、血液を送り込むように扱かれる。ゆっくりと臨戦態勢になる矢木の分身。アカギは口を離し、軽く唇を舐めながら上目遣いに言う。
「世話焼けるなー」
自分を負かした相手に勃たせられる。なんという羞恥。しかし、快感を貪りだした自分も紛れもなく真実。
「ガキの……くせにっ……」
罵る台詞も遠吠えにしか聞こえない。
「ほら、続きは自分でできるだろ?」
――憎いと思っていた。
自分を破滅させた相手。もう一度会ったら、手段を問わずめちゃくちゃにしてやる、そんな思いまで抱いていた。しかし。
あの瞳が。自分を見つめるあの暗黒が、矢木の思考を、行動を縛る。
ここまで来たら引き返せない。アカギが退いた後、矢木は目を瞑って自身を慰め始めた。
なにも考えないように、ただ射精へ向かう行為に集中しようとする。それなのに――頭を掠めるのはアカギの姿態。奴の舌が、唇が、自分を追い立てる。
(まさか、まさか……オレは……何を、……)
敗北した日から、矢木の心を支配し続けていたその相手が、再び現れ、自分に挑んでいる。かつて想像だにしないやり口で、再び自分に対峙している。
憎しみに囚われている間にその存在は増し、矢木を絡め取っていた。
シュッ――
マッチをする音。つん、と燐の匂いがした。
はっと、目を開けると、アカギが矢木の煙草を勝手に吸っていた。
煙を燻らせ……自分を見ている。闇が。
思わずカーッと全身に血の気がめぐる。これは羞恥なのかそれとも――。
(馬鹿なっ!)
しかし、握りこんだ自身は萎えることなく、欲望の汁を溢れさせだした。
「フフ……矢木さん、気分はどうだい?」
「……っ」
矢木は答えられない。絶望と快感の狭間。矢木が陥っているのはまさにそんな状態。ひたすら無心を演じる。絶頂の気配を感じ、少しでもアカギの目を逃れようと背を向け、目線は塵紙を探す。
「どうしたの?」
「……もう……限界だ……出る」
「じゃあ、そこで出しなよ」
「えっ?」
煙草を揉み消し、さらに追い討ちをかけるアカギ。座った矢木の上にどん、と馬乗りになる。
「わっ!」
バランスを崩し背中を打つ。矢木は仰向けに倒れ、思わず握っていた手を離した。腿の上にはアカギの重み。体が重なった部分でじわ、と汗がぬめる。
「オレの目の前でイクんだ。こうやって……、見ててやるから、さ……」
その冷ややかな目に見下ろされる恥ずかしさといったらない。しかし――。
「や、めろ……」
口では抗っているのに、露になった矢木の分身は、早く続きを――と、びくびくとねだっているのだ。アカギはくっと笑い、矢木の手をそっと取り、その雄身に導く。再びゆっくり扱くと、重ねた手が蜜にまみれ始める。
「ほら、体の方が正直だな」
「ば、……馬鹿な……」
「……いい加減、認めろよ。アンタはこういうのが好きなんだ」
「な……!」
くやしさに、目が霞む。悪魔の顔がぼやける。しかし、何故かこみ上げてくる快感。矢木は混乱する。
「うぅ……やめ……」
「くやしいんだろ、オレに負けて。そりゃ、くやしいよな? いい大人がオレみたいなガキにおもちゃにされて」
「うっ……あ……あぁ……」
蔑むような言葉。しかし、その言葉は矢木の体を火照らせ、かつてない感覚が全身をじりじりと包んでいく。徐々に上下する手が早くなり、再び絶頂が見えてくる。
「アンタの心は――プライドは、どうでもいい鎧でがちがちに固められている」
「は……はぁ……よ……鎧……?」
口を開けば官能が零れだす。手は止まらない。矢木は既に自ら欲を貪っていた。
「それをオレが脱がしてやる。服脱いだときの開放感――、忘れたとは言わせないぜ?」
「開放感……?」
(……そうだ、確かにあの時。風が……吹き抜け……て……)
「まずはその、体にたまったもの……全部出しちまえよ、矢木さん?」
アカギは上体を摺り寄せ、矢木に顔を近づけた。刹那、目が合い、囁きが。吐息が。ぞくりっ、と矢木を押した。
「……あっ……ああっ!」
束の間の解放。矢木は自らの腹の上に白濁を撒き散らした。
「はあっ……はあっ……」
目を閉じる。突き抜けた快感の余韻に浸る。半身を起こす。息が整う前にアカギが動いた。とろりとした精液を指で掬う。
「いっぱい出たね、溜まってたの? ……矢木さん」
「う……うるさい……」
その指を、まだ固さの残る矢木の雄身に塗りつける。
「……な……?」
「まだだよ……まだ、終わりじゃない」
少し甘えたような口ぶりで、アカギはシャツの裾を肌蹴た。肉色に怒張した男根。
矢木は、ドキリとした。
すでに子供のものではないそれを掴み、先の部分を矢木の雄身にに擦り付けるアカギ。素っ裸の矢木に対し、未だシャツを着たままのアカギというコントラスト。視覚的な刺激とぬるぬるとした感触は、再び矢木を狂わしい官能の淵に落とす。
「……お前……」
萎えかけた一物は、あっという間に元の大きさに戻った。
「くくく……矢木さん、結構元気じゃない。何……オレ相手に興奮してるの?」
矢木は答えなかった。アカギが体を擦り寄せて来る。白濁でぬめる二人の体の間で、欲を孕んだ互いの肉棒が蠢く。
「それでいいのさ、何も遠慮することじゃない」
口調は落ち着いているが、奇妙に熱っぽい調子を帯びている。
「……ち、違う」
決して認めたくない。認めてしまったら、本当に終わり。おそらくあの勝負の時から、たった今、この時も絡め取られている矢木の心。
「まだそんなこと言うのか?」
アカギは笑い、少し体勢を変え矢木の腹に舌を当てた。そのまま胸の突起へ、首筋へ、耳元へ。座したままの矢木が感じているのは、アカギの熱。汗と唾液と駆け上ってくる戦慄。
「こうやって追い詰める。矢木さん、アンタの味は……忘れない」
その間、なすすべもなく、矢木は震える両腕でアカギに縋り付く有様。
「他人をハメてきた――そんなアンタが追い詰められるのは、どんな気分なんだい?」
それでも、矢木は拒むことが出来ない。ただ顔だけを背ける。矢木の最後のプライド。
アカギは矢木の切っ先を掴んだ。指先で鈴口を弄ぶと、そこはすぐに次の快楽をねだる。
「フフ……。矢木さんのここは、いいコだな……」
矢木の手を、アカギはもう一度雄身に導く。
「今度は自分で抑えてるんだ。ギューっとな」
「……え?」
言われるがまま雄身の根元を握り込む。
アカギは見せ付けるように矢木の目の前で足を開き、自らの穴を解し始めた。服の影に見え隠れする欲望の穴。
むくむくと首をもたげる雄の本能。アカギをめちゃくちゃにしてやりたいという思い。しかし、今ではその思いが変化している。――否、それは鏡の表裏一体。アカギに従うことへの喜び。
「そら、ご褒美だ」
アカギのそこは難なく矢木の肉欲を咥え込む。限界までアカギに受け入れられ、身をくねらせて喜びに震える矢木の分身。アカギはゆっくりと腰を上下し始めた。
抜けるぎりぎりまで腰を引き、最奥まで一気に戻す。動いているのがアカギのせいか、実際刺し貫いているのは自分であるのに、矢木は無理矢理犯されている様な感覚に陥る。纏わりつく肉壁は矢木の本能を揉みしだく。
「……う……イきそうだ……こんな……」
「まだだ……まだ……」
アカギが動くたびに、絶頂へのゲージが溜まる。しかし、まだ放出の許可は下りない。ゲージを振り切り、幾らでも淫楽のメーターが増えるような感覚。矢木はおかしくなりそうだった。
「……ありえない……ガキ……相手に……」
矢木の浮かされたような呟きに、アカギはふっと笑う。
「そんなこと、どうでもいい。捨てちゃえば楽になる……」
楽に。そう、楽になりたい。
(早く、早くイかせてくれっ……解放してくれ!)
「ただ感じればいいんだ……」
感じる。感じるのは――快楽。
この快楽をどこまでも果てなく貪りたいという思い。
「ほら、言ってみな、どうしたいんだ?」
せめぎ合う二つの感情。自分では選べない究極の選択。
「……アカギ……っ! アカギっ……あぁ……」
「そうだ、矢木さん。今、見えていることだけが真実だ……」
「……はぁ……ああ……た……頼む……」
矜持はすでに砕けた。矢木はアカギに請う。
「お願い……だ……もぅ……いか……せて……」
懇願する。
自分で手を離せばいいのに、矢木にはそれができない。待っている、アカギの許しを。そうやって自ら快楽を引き出す。純粋に、己の本能に真摯な態度。
「ほら……」
アカギは矢木の手をそっと促した。自らを戒めていた指を離し、解き放たれた猛犬のように、矢木はアカギを突き上げる。がくがくと狂ったように腰を振る。
「……あぁ……ああ……」
(アカギと繋がっている。この悪魔を、オレはこの男を抱いている)
「……っ……」
アカギはただ黙って矢木の情欲を貪る。熱っぽいが蔑んだようなその視線にさらされると、全身が燃え上がるような快感に満ちる。まさに情炎が矢木を焼く。
(堕ちる……オレは……堕ちて……行く……)
憎いはずの相手。その相手から支配されることへの――陶酔。
これは矢木の心の底からの欲望。真実。
あの日からずっと求めていた相手と、再び、魂が対峙する。
(アカギを……アカギと――――。オレは、アカギに……堕とされ……る……)
「あ……アカギ……!」
「……っ!」
ぎりぎりまで耐えていた絶頂はあっという間に訪れた。どくどくと己のプライドを注ぎ込む。それを絞りつくすように受け入れ、アカギ自身も、矢木の腹の上に精を吐き出す。
恐怖に近い緊張で張り詰めていた矢木の感覚が、快楽に侵され、蹂躙された。矢木の中で何かがふっと切れ、陶然とした思いに満たされる。
「アカ……ギ……オレは……」
気力、体力ともに限界だった。アカギの体の上に倒れこみ、力なくうわごとのような言葉が漏れる。矢木の言葉に何を感じたのか、アカギは答える。
「矢木さん……。アンタがオレに教えてくれたんだよ? 一番最初にね」
識閾下に浸透する囁きは、矢木の神経の一番敏感な部分に響いた。矢木は祈るように問う。
「オレが……何を……」
フフッっとアカギは笑う。
人が破滅する音、さ……
意識が暗黒に堕ちる瞬間、矢木が聞いたのは、悪魔の声。
甘えるような声音は間違いなく、まだ少年のそれだった。
失神し、薄く開いた矢木の瞳をそっと閉じ、アカギは体を起こした。服を身に着ける。
「……まだだ」
白髪の少年は一人呟き、仄暗い部屋を後にする。
その顔に浮かぶのは、気高き孤独。瞳に宿るのは、満つる事なき――深淵。
軋んだ音を立て、扉が閉まる。
残された矢木の裸身を、宵闇という慈悲が包む。
空っぽの男。
幼子の母に、信徒の聖母に対する敬慕にも似た、男の恍惚の表情が、暗闇に沈んでいった。
了
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