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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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osamu02

【ホモエロ がっつり注意】
















【弐】




 治はもう一度聞いた。自分は既に果てた。アカギも……その筈だ。
「終わりじゃないって……俺、もう……」
 アカギは紫煙をくゆらせた。
「本来……おまえがオレを抱くのが筋だ」
「え……」
 アカギさんを抱く……。俺が?
 煙草を銜えるアカギはいつものクールな表情だった。まるでさっき迄の行為などなかったかのように。
「やり方はわかっただろう」
「あ……」
(今までのことは、オレに教えるため……?)
 果たしてあれほどの官能を、自分がこの人に、与えられるというのだろうか?
 だが治は心を決める。
「僕、やります」
 アカギの目を見つめ、治は熱っぽい表情で頷いた。
「フフ……まあ、気楽にやれよ」
 アカギは煙草をもみ消した。伏せた瞳に湛える漆黒の闇。その倦んだ表情が、治の前では薄らいでいることに、当の治は気づいているのだろうか――。

「……じゃあ、始めよう」
 裸で向かい合って座り、あらためて宣言されると何とも気恥ずかしい。いや、むしろ滑稽である。治はストレートに抗議した。
「アカギさん……。僕、思うんですけど……」
「何だ……?」
「男女のことはよくわからないけど……きっと……こういうことって、もっとデリケートに始まるっていうか……」
 既にお互い精を放っておいてデリケートも何もないが、そういう頓珍漢なところも治の個性なのだろう。
「……あの、僕の思い込みかもしれないけど……」
「じゃあ、おまえの思う通りにやったらどうだ」
 治はアカギを見つめた。自分を幻惑し、単調な日々から連れ出した張本人。共に過ごした苛烈な日常。現在に殉ずる生き方を示し、アカギは去った。
 そして今――。
 ほんの数日で治の人生を翻弄し、狂わせたと言っていい男が、目の前にいる。心の底から憧れ……それでも、己が手には届かないと知った男。
(オレも……今、この一時に……殉じる)
 治はおずおずと、アカギの頬を触る。そして目を閉じ、唇を重ねる。アカギは、フッと笑い、治に従った。

 煙草の匂い。これはアカギの匂い。
 そして、柔らかい唇の感触。やがてどちらともなく口を開き、舌を絡める。治は両の手でアカギの顔を抱えた。与えられるだけだった先程には気づかなかった、アカギがふと漏らす喘ぎ。思わず、カッと、血が全身を巡る。淫らだが確かな予感が治を密かに震わせた。
(オレが……アカギさんを……抱く)
 それは本能。紛れもない男としての欲望だった。
 治は目を開けた。闇が、見ている。しかし治はその瞳を見据える。アカギと治、二人の視線が絡んだ。
(アカギさん……)
 治はそっと、アカギを押し倒し、体を重ねた。

 無我夢中。
 治がアカギを求める過程は、その一言に尽きた。といっても、教えられたばかりの手順を疎かにするほど意識が飛んでいたわけではない。むしろ、治は出来のよい生徒だったと言える。唇に、首筋に、胸の突起に――アカギが与えた愛撫を、従順になぞる。しかし、思い余って――噛む。歯を立てる。どうしても、積もり積もった思いが暴走する。
 そして、その思いがけなく加えられた痛みにアカギが零す息。喘ぎ。どんな暴挙にも屈しない筈の男がふと漏らす官能の徴を、治は貪り、さらに猛る。
(アカギ……さん、気持ちいい……ですか?)
 心で思っていても、聞く余裕などない。なぜなら、自分が興奮しきっている。治の分身は既に復活し、自分でも気づかないうちに怒張し、蜜を滴らせていた。
「治……」
 アカギは治の剛直を握った。
「あっ」
「ちょっと待て……少し、腰上げろ」
(アカギさん……?)
 性急過ぎる前戯を諌める為か、アカギはその剛直をぎゅっと握ったまま、ずずず、と下がる。四つん這いになった治は少しだけ冷静になる。しかしそれも一瞬のこと。
「……あぁっ!」
 アカギは少し口を開き、出迎えた舌で蜜を舐め取り、猛った剛直を口腔に収める。艶かしい愛撫はたちまちに治を蕩けさせる。
「あっ……やっ……ダメ、です……」
 若い治にとって、口淫の魔力は抗えない媚薬だった。攻めは疎かになり、巧み過ぎるアカギの技にあっという間に陥落した。
「あっ……だめ……や……止め……あぁんっ!」
 不安定な体勢のまま、びくびくと果てる。アカギは無表情のまま、精を飲み込み、言った。
「もう一度だ……」
(えっ)
 いきなりの射精に息の上がった治だったが、切ないように囁かれると、再び何かが滾ってくる気がする。返事をする余裕も出た。
「はい……」
 素直に従い、アカギに覆いかぶさり軽く口付け、気付く。
(これは……自分の精液の味……なんだろうか)
「それ」をアカギと共有することに、後ろめたいような淫靡な喜びを感じてしまう。
(――オレ、ちょっと変、かも)
 そう思いつつ、治はどうしようもなく興奮し、唾液を吸い尽くすように愛しい人の唇を貪る。
「アカギ……さん……」
「ほら、これ……」
 ワセリンを渡され、今がその時だと思い至る。アカギは治に向き合ったまま、自分で足を開いた。秘所を暴き、丹念に油薬を塗りこめると、そこは治の指を受け入れる。
「……っ」
 治はアカギと抱き合う形になって、指だけでアカギを攻めた。嬌声こそあげないものの、自分が指をくねらせる度に身悶え、踊るアカギ。二人の体に挟まれた肉棒が固さを増していくのを、はっきりと感じられる。自分の指がこの人を犯しているのだという喜び――本能。
 が、アカギが官能的に身を捩る姿に、ふと不安という魔が治の心を掠める。
「アカギ……さん」
「……っ?」
「アカギさんは……今までも……誰か……」
 ゆっくりと後孔内で指を広げ、閉じながら尋ねる。
「男の人と……」
 しかしアカギはぴしゃりと言った。
「馬鹿。集中しろ……」
 ――集中。
(そうだ、今、アカギさんを抱いているのは、オレだ)
 目の前の、この人を、今。喜ばせられるのは自分だけなのだ。
 今に殉じる……そう誓ったではないか。
「ごめんなさい……」
 治は謝り、もう一度アカギの後孔を広げ、今度は自身の挿入を試みる。入り口は治の切っ先を受け止めた。アカギの体が、ぴくっと反応した。
 「行きます……」
  何度か滑ったものの、握って固定した切っ先をずず、と埋め込むことができた。ちら、と顔を見れば、アカギはほんの少しだけ口を開け、真剣な表情で治を見つめている。
(アカギさん……。オレ、今……)
 先の太いところまでを挿入れた後は、手を離し、徐々に腰を沈め、深く、深く穿つ。
「入った……」
 一体感。
 思わずぺたりと体を寄せ、上体をぎゅっと抱きしめる。
「治……」
「はは……オレ、なんか嬉しくて……。アカギさん、大丈夫……ですか?」
「……ああ」
 アカギも治の背中に手を回した。もう一度、きつく抱き合う。
 求め、求められるこの時。
(ああぁっ!)
 治は啓示を受けたようにはっきりわかる。体得する。
(オレは、今、この時のために生きている)
 この人の魂が求める先。初めてその岬が、見えた、と。
 治はアカギに口付けた。唇で、雄身で、治は刻む。己が刻印を愛する人に。オレを感じて、と。魂を――刻む。
(ああ、オレ……今)
長い長い一瞬。
(もう死んでもいい……)
 互いの人生が交わることは、もう二度とないのかもしれない。しかし、そこに意味はない。今この一瞬が二人の生の全てなのだ。己が魂を相手に捧げ、互いに受け取める。それは魂の交歓。歓喜。治の心は果てた。
 歓喜の余韻の中、治はゆっくりと腰を揺らし始めた。
 動き出したら、もう止まらなかった。猛った雄身を抜く寸前まで腰を引き、差し込む。差し込む。差し込む。アカギも治の攻めに照準を合わせ、自らを投げ出す。二人は登り詰める。体の絶頂は間近。治はその一刺し一刺しを慈しみ、アカギに捧げる。
(アカギさん、アカギさん、アカギさん……)
「アカギ……さんっ!」
「……っ!……」
 二人はほぼ同時に精を吐き出したのだった。



 しばらくは二人とも無言だった。体を拭き、アカギはハイライトの箱に手を伸ばす。シュッ、という音と共にマッチに火が点され、情事の後の部屋には再び煙草の匂いが充満する。治は灰皿を差し出しながら言う。
「アカギさん……」
「……なに?」
「やっぱり、僕が傍にいちゃ……迷惑ですよね」
 アカギは仰向けに体を投げ出し、煙草を一口吸っては、ふーっと長く煙を吐き出す。
「……自分でも分かってます。アカギさんの深さまで、僕は潜れない」
 治は思いつめたように続ける。小さな部屋に、朴訥とした治の言葉だけが響く。
「でも……アカギさんのこと……僕……忘れたくないっていうか……」
 アカギは黙っている。一条の煙が、天井に向かってたなびく。
 しかし――。
 消え入りそうな声から一転、治の口調が元に戻る。
「だから……お願いなんですけど」
「……?」
 アカギは治の方を向いた。治は顔を寄せて、深刻そうに言う。
「もう一回……いいですか?」
「……えっ」
 少し戸惑ったようなアカギの顔を、治は……可愛いとさえ、感じた。


 しばらく唖然と治を見つめ、やがて、フフッとアカギは笑う。そして指に挟んだ煙草を口に持っていく。ゆっくりと煙を吐き出し、言った。
「おまえの、そういうところ……悪くない」
「アカギさん……」
 治の顔が、ぱっと輝く。



 ――結局、二人はその後も幾度となく体を重ねる。肉体は限界を迎え、やがてどちらともなく深い深い眠りの世界、心地良い暗黒の夢に堕ちていく。

 甘く気だるい暁闇に、治は一度だけ目を開けた。目の前には静かな寝息を立てるアカギの姿があった。光の届かない修羅の世界に生きる鬼が、束の間見せる天使の寝顔。安心しきった子供のような、邪気の落ちた顔。
 治はなぜか、はっと、悲しみに打たれた。アカギの孤独を、孤高の姿を垣間見たような気がしたのだ。治はそうっと目を閉じる。アカギの姿は再び漆黒の中に埋もれた。

 もう一度治が目覚めた時、アカギは既にいなかった。灰皿に残る吸殻と、体の奥に疼く熾のような痛みだけが、その存在の残滓を示す。
(アカギさん……行ってしまったんですね……)
 もう再び会うことはないという予感が、治を襲う。
 だが――。
 前回の別れに感じた喪失感。あの空しさを覚えることはなかった。
 憧れの人。理解することは終生出来ないかもしれないが、その人の生きている世界――刹那の世界を、共に生きた。共に感じた。
(アカギさん……。オレはあなたの孤独な魂に寄り添えたのでしょうか……)
 治は泣いた。





 次の日から、治は再び日常に舞い戻る。毎日の仕事を勤め、雀荘に集まる擦れ枯らし共をあしらう日々。しかし、まるで夢のような、いや、実際夢だったのかもしれない――あの夜のことは一日たりとも忘れたことがない。
 一瞬という永遠に、治は生きている。今日も、その身を殉じて、生きている。







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