◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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【以下腐要素含みます】
◇◆◇◆◇
「おい、アカギ、待てったら」
「何?」
先にスナックを出た白髪の少年は歩みを止め、南郷を待った。場末の雰囲気にそぐわない、制服姿の学生。彼はどこにいても、どこまでも異質の存在だった。南郷はおもねるように言う。
「考え直す気は、ないのか?」
アカギはちら、と南郷を見ただけで黙っている。その目は、すでにその話は終わっている、そう語っていた。
「――だよな、やっぱり」
ヤクザを相手にした麻雀賭博の再戦。なんとアカギは南郷の全財産だけでなく、単なる仲介人であったはずの悪徳刑事・安岡の私財までを乗せて、勝負に出ようとしていたのだ。
「無茶苦茶なんだよやることが……」
南郷の呟きに、アカギはふと頬を緩める。
「じゃ、行こっか」
「どこに?」
「夕飯。南郷さんも食べるでしょ、いっしょに?」
「え、ああ」
「まだしばらく南郷さんトコで、厄介になるからさ」
そういえばアカギは安岡に何事かを諭されているようだった。南郷が怪訝な顔をしていると、見透かしたようにアカギは言った。
「安岡さんが言うには、あのヤクザが連絡してくるかもしれないって」
「お前にか」
「ああ。脅しか懐柔か、まあ、そんなトコ」
「ええっ! 危険だろう、それは」
「でも実はオレも、あいつらに用があるんだ。だから――、頼むよ南郷さん」
「お前、勝負まで身を隠したほうがいいんじゃないか?」
相手はヤクザだ。どんな手を使ってくるか知れたものじゃない。しかしアカギは取り合わない。
「何言ってるの。そんなのオレは気にしないよ。――ダメかい?」
「そりゃ、俺は構わんが」
(まあ、下手にフラフラさせといても、コイツの場合、かえって危険かもしれないな)
単に使われているだけかもしれないが、アカギが自分を頼ってくれている、その事実が南郷の不安な心をほんの少しだけ上向きにさせる。
「わかった。で、今日は、何が食べたいんだ」
「ふぐさし」
「お前な……」
◆◇◆◇◆
六百万の勝負という現実は、南郷の心をがっちりと捉え、そう簡単に離してはくれない。現在の貨幣価値でいったら、ほぼ一生かけて稼ぐような大金に値するのだ。負けたら生命保険で支払うしかないという事実は、あの夜から全く変わっていない。そう、自分は、雲間から差し込んだ陽光に一時、浮かれていたに過ぎない。
今日の酒は悪い酒だった。
さすがに二日続けてみっともないことは出来ないと、自制してはいるものの、安岡との会合によって差し迫った未来は、南郷を悪酔いさせた。
部屋に戻るとそのまま、布団に突っ伏してしまう。
「気分でも悪いの?」
「誰のせいだと思ってるんだよ」
悪心はなかったが、とにかく頭が痛い。自分でも大人気ないと思うが、イラつく気持ちをぶつけずにはいられない。
「あんな無茶な勝負、どうかしてる」
「なんだ、まだそんなこと言ってるの」
アカギは薄く笑う。
「もう、とっくにダイブは始まってるんだよ」
「俺には無理だ」
ごろり、と横向きになる。片肘を枕に寝そべり、傍らに座っている少年を睨む。
するとアカギは立ち上がり、南郷のすぐ傍に座り直す。
「酒なんかじゃ、勝負の味は薄まらないよ」
そう言うと、南郷が飲みかけていたコップの水をこくん、と飲む。
「生きるのも死ぬのも、紙一重、さ。だったら」
そして、南郷の足の隙間に手を差し込み、ズボン越しに股間をなぞる。
「お、おい」
酩酊とまではいかないが、意識は酒によって濁っている。それなのに、磨耗したはずの感覚が、アカギに触られただけで、研ぎ澄まされていく気がした。南郷の分身は、瞬時に全身の血液を集めたかのように固くなっていく。
「ぅあ」
「ただ、今を生きればいい」
アカギは南郷のそこをしっかりと見据えながら、ゆっくり指を滑らせる。視線によって撫でられているかのように、羞恥が南郷を熱くした。
「や、やめろ」
背を向ければ済む話。しかし南郷は動かなかった。それでも抵抗を見せるつもりで、手を払いのけようとすると今度は反対の手で腕を掴まれた。
「なんでさ」
アカギはちらっと南郷の顔を見る。
「なんでって、そんなことしちゃ――いかんだろ」
「ふーん」
するとアカギはあっさりと引く。
拍子抜けした南郷は熱を持て余す。アカギに掴まれたままの腕が妙に気になる。
しばらく沈黙した後、アカギが呟く。
「それじゃ、困ったな」
「な、何が」
取り縋るようにアカギの言葉を待つ。流されている。甘えるような声音に、こちらを伺う獣のような目に、少しずつ、崩されていく理性。南郷の酔いはすっかり醒めていた。
「だって、オレも勃っちゃってるのに」
「えっ」
「ほら」
アカギは膝立ちし、南郷の手を、自分のそこに導く。
「お、おい……」
自分のものではない男の象徴。そんなものを触るのは無論初めての経験だ。
これが別の誰かだったらどんな気分がするのか、想像もできない。おそらく、気色悪いといった感覚でないだろうか。
しかし、アカギのそこを触った瞬間、南郷は弾かれたように、一つの欲望に囚われる。
――コイツを、イかせたい。
固くなったこの肉欲を思う存分扱いてやりたい、精を吐き出させてやりたい。
そんなことを瞬時に思ってしまう。無意識のうちに、しっかりと握りこもうとして力が入る。
「じゃあさ、自分でやれば問題ないだろ」
相手の熱を知ってか知らずか、アカギはしれっと言い、南郷の手を退けた。
「南郷さんだって、抜いたほうがスッキリするんじゃない。そんなに固くしちゃ」
「うるさい」
(勝手にその気にさせておいて、いけしゃあしゃあと……)
いや、先に制止したのは自分だから文句をいう筋合いではない。南郷はしぶしぶ同意するといった体裁を繕う。
男同士とはいえ、他人の目の前での自慰という初めての経験に、いたたまれず背を向ける。――と、かちゃかちゃとベルトの音がした後、ごそごそとズボンと脱ぐ気配。
「何やってんだよ」
思わず振り向いて言う。服を少し下げればいいだけのことだろうに。
「だってこの方が楽じゃない。南郷さんも脱げば」
「ええっ」
「今更何言ってるの、いっしょの風呂に入った仲じゃない」
「それは、全く別問題だろ」
そう、別問題――。だがその言葉に、アカギの背を、胸を思い出す。
無数の傷を印した、白い肌。まるで女のような肌理の細かさだというのに、その下半身には自分と同じ欲望を抱えているのだ。アンバランスな現実が、南郷を倒錯の世界に誘う。
そして、目の前の現実。シャツだけを身に着けたアカギ。しどけなく座り、靴下まで脱ごうとしている姿。すっと伸びる細い足は妙に艶かしい。
心臓が、その存在を主張するかのように、鼓動を加速し始めた。
(俺は生き残った。生きている)
南郷は思わず顔を背けた。どうとでもなれという気持ちで下衣を脱いだ。
続く……
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