◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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【ホモエロ がっつり注意】
◆◇◆◇◆
座り直した南郷は、自分自身を握り込んだ。服を脱いだことで冷やりと感じた醒めた気分も、背に寄りかかるアカギの体温が、まるで本当の情事のように、他人との対峙を意識させる。
半勃ち状態は過ぎ、もう引き返せない熱を抱えていた。無意識に先程のアカギの”感触”を反芻する。
(アカギはなんで、あんな……)
単純に、若さ故持て余した欲なのか、それとも――。
(まさかオレを相手に欲情したなんて事はない、よな)
頭では、冷静なつもりでそんなことを考えているが、体は、雄芯は、益々猛っていく。
(じゃあ、オレはどうなのか。こんなに昂ぶっているのは何故だ)
論理的な思考で気を逸らすつもりが、結局、考えるのは背中合わせの相手のこと。アカギのこと。
胸が押し潰されそうな緊張。それなのに顔は火照り、怒張は先走りの蜜を垂らし始める。
「ねえ、南郷さん」
「な、なんだよ」
「せっかくだからさ。いっしょにやろうよ」
嫌な予感がした。ざわ、という心が総毛立つ予感。
「ほら、こっち向きなよ」
「いっしょに、って……」
「死ぬも生きるもいっしょ。クク……。それが一蓮托生ってことだろ?」
アカギは嬉しそうに笑う。
「な、何が」
胡坐をかいたまま振り返ると、アカギは南郷の足を少し開かせ、目の前に、向かい合わせに座った。突然至近距離に収まったアカギ。腿に載せられた足の重みだけが現実感を帯びている。
アカギが目線を落とした先には、はち切れんばかりの自分の欲。短いシャツだから丸見えである。無遠慮に眺めるアカギの視線が恥ずかしくて、思わず反対の手でも隠そうとする。しかしアカギはその手を払い、南郷の急所を抑えた。
「なっ」
「なんだ、南郷さん。結構ノリノリじゃない」
右手に重なったアカギの指が先端に滑る。その指に甘えるように、蜜が更にぬるぬると溢れ出すのがわかった。
「あっ」
「フフ……」
挑むような瞳。大人をも凌駕する、あの嵐の夜の気配を刹那嗅ぎ取る。アカギはシャツの前側を肌蹴させた。そこにあるのは紛れもなく雄の象徴。南郷はなぜか、もう引き返せないという諦めに似た気持ちを感じた。アカギはペニスを自分で握り込み、南郷のそれと重ねる。指とは違う太く柔らかな弾力を感じた。
「南郷さん、ほら」
いっしょに、とは、つまり同時に扱き合うという意味なのだろう。導かれるままに南郷は指を絡め、自身と、アカギの雄身を擦った。
「うっ……ああっ……」
先走りが手にぬめる。それが自分のものなのか、アカギのものなのか。擦る指もどちらのものか次第にわからなくなってくる。無我夢中なようでいて、アカギのペニスがぴくんと脈打ち、彼が熱っぽい息を吐く度に、妙に冷静になる自分もいる。
(お前も、俺と同じように、感じているのか? 欲を吐き出したいのか?)
「やっぱり…、上も脱ごうか…?」
「えっ……あぁ……」
少し上ずった声でアカギが言う。先にシャツを脱ぎ、アカギの傷だらけの白い肌が現れるのを見ていると、口付けたいような衝動に駆られたが、危うく自制する。中断されたにも関わらず、南郷の猛りは限界までそそり立った。
今度は少し持ち方を違え、つまり、お互い相手のものを中心に握り合う形で、擦りあった。再び先走りが絡み合う。南郷は自分のもののようにアカギを攻める。アカギも、南郷がイキそうになると、じらすように緩急をつける。悦楽の共有。肌の重なった部分から、感覚までもが溶け合っていくようだった。ゆっくりと追い上げ、追い立てられ、二人で高みにせり上がっていく。もたらされる快楽は自慰の時とは比べようもなかった。
「だ…めだ……あぁ……」
「……っ……」
絶頂が見えた南郷は、たまらず空いた手でアカギの腰を引き寄せた。包まれるように下腹部が密着する。
「アカ…ギ……オレっ……出っ……!」
「……あっ…!」
南郷の射精が刺激となって、アカギも果てたようだった。放たれた白濁は交じり合い、互いの腹部を伝った。快感が強く、びくびくと、後を引く射精。二人は互いの肩にもたれかかり、しばらく動かなかった。
◆◇◆◇◆
「ふー……」
寝そべってタバコの煙を吐く。傍らでアカギも横になる。
「しかしお前……」
「何?」
「いや、なんでもない」
アカギは口をつぐんだ南郷の横顔を見つめた。
「南郷さんが言おうとしてること……大体わかるよ」
「え」
俺が何を言おうとしているというのか。
しばらく黙った後、アカギは言った。
「……あんたがあの時見せた狂気」
「オレが?」
「あの晩の、捨て身のウーピン切りさ」
「ああ」
「ああいう狂気に焼かれる生き方――、面白いって思った」
「えぇ?」
狂気に身を預けろ。確かアカギは昼間、そんなことを言っていた。
「俺にはそんなこと……」
「フフ……。認めろよ。誰もが持っている狂気。南郷さんは、それに向き合えたってことじゃない。――さっきもね」
誰もが持っている……。
(確かに、あんな暴挙、あんな破廉恥なこと、まともな大人のすることじゃない、か)
しかし。
(俺がおかしいっていうのか)
「面白い……よ……」
言うだけ言うと、アカギは先に眠ってしまう。
置いてけぼりにされた南郷は、タバコを揉み消す。そして、あどけなさの戻った寝顔を見つめる。
(とんでもない、魔性だ)
厳密には情事ではないのだろうが、それと変わらない後ろめたさ。貪ってしまった自分への自己嫌悪。それを相手のせいにしようとしていた。
しかし。
思えばこの少年は、誰とも目を合わせない、誰とも向き合わない、そんな人生を送ってきたのかもしれない。
否。
周りがそうだったのだろう。
圧倒的な才気。それは周りの人間に畏怖をもたらす。
異端。
アカギと対峙できるのは、狂気に炙られた人間だけ。
南郷はアカギの白い髪を撫でてやる。
(こいつは、人間に飢えているんだ。
どこかで、自分と相対する存在を求めている。
しかし、この男の圧倒的な渇きを満たせる人間が、果たしてこの世にいるのだろうか)
――乾いた心。
そう、アカギがこれから進むのは、間違いなく修羅の道。
苦しみに彩られた人生。悪鬼の棲む闇。
しかし、この男を、闇に放ってしまったのは――。
(この俺だ)
狂気をアカギに託してしまった。自分は逃げたのだ。
アカギは突っ走る。どこまでも、たとえ先に地獄が見えていても、走るのをやめる気配はない。そして、いつ出会うとも知れぬ幻想の相手を探して、彷徨い続けるのだろう。
……死ねば助かるのに……
南郷に対し、アカギが初めに言った言葉。
狂気と孤独を抱えて生きていく。こいつの生に、どれだけの希望があると言うのだろう。
南郷は天井を見つめた。
雨漏りの後だろうか、黒ずんだ染みを眺めていると、逃げ出したくなるような不安に駆られる。
アカギの将来に、差し迫った自分の未来が重なる。
追い落とされる絶望。
足元から這い上ってくる恐怖。
アカギに対する責任感のような思い。
一蓮托生。
南郷の眼に、仄暗い光が宿る。南郷はむくりと起き上がった。
(アカギ……)
アカギは眠ったままだった。その生き様にはどこか野良猫、あるいは野生動物を思わせるところがあるのに、寝つきがいいのが不思議だった。
(それとも、オレを信頼しているとでも言うのか)
眠っているアカギの首に手をかける。ぐっ、と力を加えると、少年は目を開けた。一瞬驚いた顔をして、反射的に南郷の手首を両手で掴む。
「南郷、さん……?」
見据える瞳。どこまでも暗い深淵が、今、自分の手によって閉じられようとしている。顰めた眉に苦痛が滲んでいる。
しかしアカギは抵抗するでもなく、目を閉じた。両手に込められた力が抜け、南郷の指の上に添えられた。
(アカギ?)
うっすらと目を開け、もう一度南郷を見る。
口元に浮かぶのは、自分を殺そうとする男を受け入れる微かな笑み。
「――!」
南郷は理解する。自分の傲慢を。狂気を。
自分に全てを委ねている、無垢な心への裏切り。
アカギの未来、人生、幸せ、そんなものを勝手に斟酌している。
この自由な魂を、己の矮小な価値観が縛ることなど、元より出来はしないのに。
「アカギぃ!」
首から手を離す。
気管が解放され、再び送り込まれる酸素に咽るアカギ。
南郷はその首元に抱きついた。
「すまない、アカギ。本当にすまないっ!」
「な、なんだよ」
本当にきょとんとしているアカギのことを、ただ、愛しいと思った。
「重たい」
耳元で文句を言うアカギ。何を言われても、嬉しいと思った。
(オレはコイツに惹かれているのだ。狂おしいほどに)
そんな単純なことに、やっと気がついた。
◇◆◇◆◇
「――で、本当に、大丈夫なのか?」
「問題ないよ。そんなに心配なら、一緒に来るかい?」
「あ、ああ。そうだな。そうするよ」
勝負の前日。
アカギは暴力団の呼び出しを受け、出かけるのだと言う。
そんな必要ないと説得する南郷に対し、アカギは、どうしても譲らなかった。
「はあ……。うまく行くわけないんだ」
「大丈夫だよ、ちゃんと地図書いたから」
「そういう意味じゃない」
「クク……」
巨額の資金をかけた麻雀勝負、その対戦相手の呼び出し。
監禁か、脅迫か、これからどんな目に合うかもわからないというのに、アカギは何故か嬉しそうだった。
(無茶だ。本当に無茶苦茶な奴だ)
しかし、その無茶な奴に魂を預けてしまったのだから仕方がない。
(こうなったらどこまでも一蓮托生だ)
「アカギ、待ってくれよ」
南郷は何度目かわからないため息をつき、アカギの後を追った。
了
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