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死にネタあり(モブキャラ)
初めての駅で電車を降りる。
囲われていた組から珍しく声がかかり、平山は代打ちとして勝負に向かう途中だった。
寒さのせいで、つい急ぎ足になる。大時計を見れば、まだ指定の時間には早かった。
通り抜けようとした駅前の広場に、行き倒れなのか眠っているのか、浮浪者が横になっていた。
(酔っぱらいか?)
この寒空の中、ダンボール一枚敷かず冷たいアスファルトに直寝。すぐ目の前にベンチもあるというのに。
そろそろ夜が来る。たとえ酔いが覚めたとしても、その時にはもう手遅れだろう。
この時期珍しくもない光景。
当然、誰も足を止めない。
あまり余計なことは記憶したくなかったのだが、平山は思わず観察してしまう。
垢にまみれた顔と手足。ぼろぼろの衣服。
靴下も履かず、寒風にさらされたむき出しの脛は赤黒い。
(あれじゃ、泥棒も避けるな)
しかし。
血縁も後ろ盾も何もない自分にとって――明日は我が身。
才に恃んで生きているものの、つまるところは現金。金がなければ死。
いや、死は怖くないのだ。たとえ無様であろうと。
死よりももっと恐ろしいのは――。
平山にとって、金は生。
安岡を繋ぎ止める唯一の手段。
金を積む。それだけが、自分の存在理由なのだ。
(――こいつの人生、何か意味があったのだろうか)
生者は傲慢に歩みを止める。
ベンチに腰掛け、煙草を取り出した。
(俺は……こんな死はゴメンだ)
だが、それなら――。
意味のある生とは、死とは、一体なんなのか。
今、結論が出ないことはわかっていた。平山は思考を停止する。
マッチに火を点ける。
それから煙草を吸い付け、今夜の対戦相手について、伝え聞いた牌譜をなぞり、頭の中で対策を講じることに集中する。
燐の匂いが風に流れたせいなのか、浮浪者はぴくりと肩を震わせた。
しかし、その後動くことはなかった。
(了)
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