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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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徒死

死にネタあり(モブキャラ)





初めての駅で電車を降りる。
囲われていた組から珍しく声がかかり、平山は代打ちとして勝負に向かう途中だった。
寒さのせいで、つい急ぎ足になる。大時計を見れば、まだ指定の時間には早かった。


通り抜けようとした駅前の広場に、行き倒れなのか眠っているのか、浮浪者が横になっていた。

(酔っぱらいか?)

この寒空の中、ダンボール一枚敷かず冷たいアスファルトに直寝。すぐ目の前にベンチもあるというのに。
そろそろ夜が来る。たとえ酔いが覚めたとしても、その時にはもう手遅れだろう。

この時期珍しくもない光景。
当然、誰も足を止めない。

あまり余計なことは記憶したくなかったのだが、平山は思わず観察してしまう。
垢にまみれた顔と手足。ぼろぼろの衣服。
靴下も履かず、寒風にさらされたむき出しの脛は赤黒い。

(あれじゃ、泥棒も避けるな)

しかし。
血縁も後ろ盾も何もない自分にとって――明日は我が身。
才に恃んで生きているものの、つまるところは現金。金がなければ死。
いや、死は怖くないのだ。たとえ無様であろうと。
死よりももっと恐ろしいのは――。


平山にとって、金は生。
安岡を繋ぎ止める唯一の手段。
金を積む。それだけが、自分の存在理由なのだ。


(――こいつの人生、何か意味があったのだろうか)

生者は傲慢に歩みを止める。
ベンチに腰掛け、煙草を取り出した。


(俺は……こんな死はゴメンだ)

だが、それなら――。
意味のある生とは、死とは、一体なんなのか。


今、結論が出ないことはわかっていた。平山は思考を停止する。

マッチに火を点ける。
それから煙草を吸い付け、今夜の対戦相手について、伝え聞いた牌譜をなぞり、頭の中で対策を講じることに集中する。


燐の匂いが風に流れたせいなのか、浮浪者はぴくりと肩を震わせた。
しかし、その後動くことはなかった。



(了)
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