◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
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(女性登場します)
「あら久しぶり~!」
「市川さん、元気だったの?」
久しぶりに訪れたスナックで、嬌声に包まれる。
「少し――体壊してな」
「ええっ? ホント?」
「もう、若くないんだから無理しちゃダメよ」
盲てから、女はみんな花みたいなものだった。
ただ、匂いをかいでは蜜を吸う。
どんな色なのかは皆目分からないから、別け隔てなどできず、
それが故にか、年齢の割に、自分はこの手の店では――歓迎される。
――いや、あいつらはもっと現金だな。
単純に金離れの良さが気に入っているだけだろう。
まあ、どうでもいいことだが。
「わしの席はどこかな?」
歩き出すときにわざと胸をつかむ。こいつは確か、古株だが気立ての良い女だ。
「いやだーっ! 市川さんっ! もう、こっちよ」
肩を叩かれ、そのまま腕を組まれ席に案内される。
花の匂いに囲まれ、すっかり昔の調子で飲み進めていると、隣に座った女がぽろっと言った。
「もう、そんなペースで大丈夫? 自分を無くすまで飲んじゃダメよ」
――自分を無くす、か。
なぜかその一言に、最後の勝負が鮮やかに甦った。
理を超えた自己。
あの小僧はどこまでも自由だった。
若さか……いや。
あいつは解っている。
おそらくこの先何を失うことになっても、己だけは見失わないのではないだろうか。
それに引き換え――。
光を失い、賭事はいつか自分の杖になっていた。
無頼を気取っていたが、麻雀などという枷の中にいたのに気付かなかった。
理に縋っているうちに見失っていた。
己を。
勝てるはずがなかった。なぜなら自己をなくしたギャンブル、それは……。
「ただの狂人だ」
思わず、笑ってしまう。
「どうしたの? ご機嫌じゃない」
「まあ、な」
コップに中身が注がれ、手渡される。
冷んやりとした液体には、熱が満ちている。
くいっと飲み干せば、心の中に、琥珀色の液体が満ちていった。
(了)
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