◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。
◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。
◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。
◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意
浦部? のポエム
アカギの葬式の話
赤木しげるの葬式に参加した。
東北の山寺で盛大に行われた儀式。
たくさんの人間がアカギの死を悼み、黙祷し、棺桶に頭を下げる。
だが自分はといえば、とうとうその列に参加できず、結局後ろで見ていただけやった。
なぜか感じる圧倒的アウェー感に押し負け、アカギの顔も見ず終い。
――そう、あそこは世間そのものや。
きらきらとした善人善女が花を手にお別れを言っとる。
中にはアカギにコテンパンにやられた者もいるんちゃうやろか。実際顔見知りの代打ち仲間にも会った。それやのに、あいつらみんなちゃんとした格好で、悲しそうな顔で、殊勝な顔で、アカギを死出の旅路に見送っとる。
一体どういうつもりなんやと思った。
いや、そう考える自分の方がまともやないんやろう、それは分かっとる。
目の上のたんこぶ。
アカギなんかくそくらえ、今の今までそう思っとるんやから。
だから。あそこは。
自分のようなハンパな人間には入れん。入ったらいかん場所。
勝手にくたばるなんて、文句の一つも言いたかった。
せやのに。
祀ってあるのは当のアカギなのに、その周りに、自分の入れない結界が張ってある。
だから入れない。
タバコに火を付け、山寺を後にする。
ろくでも無い人間。
ろくでも無い人生。
ギャンブルだけやった。
自分が依っていたのは。
アカギだけやった。
自分をまっすぐに見たんは。
アカギに負けた人間。
全力で挑み、そして負けた。
全てを失った。
いっそ清々しいほどに。
あの勝負のことは一日も忘れたことはない。
赤木しげるにはもう会えん。
いや、会ったところで、何がどうなるわけではない。それでも……。
帰りの電車に揺られていると、あんなに晴れていた空から雨が落ちてくる。
――こっちは雨が降っていたんか。
赤木しげるはもういない。
いや、最初からいなかったのかも知れんかった。
始めっから幻想なんや、あんな神憑った闘牌。有り得ん。
曲がりなりにも、麻雀に関しては自信があった。いや、実際無敵だった。
それが敗北。
あっさりと。
自分の人生の軽さ、それを看破されたような負けやった。
それから自分の身に起こったことなど、今更考えたくもなかった。
アカギを潰す。思うとったのはそれだけ。それだけを支えに生きてきたようなもんや、せやのに。
あそこにあったのは、赤木しげるの入れ物。
自分には無用の箱。それを確認しただけ。
中身は――アカギはどこにいったんや。
わかっとる。
何も変わらない。何もや。
今日も、明日も、また次の日も、自分はあの敗北を噛みながら生きていく。
そう、幻想にしがみついたまま。ずっとや。
あん時に受けられんかった勝負。
受けていれば、そこから先の人生と同じ濃さの時間を過ごせたかも知れなかった。
だが自分は保留した。
この長く怠惰な人生は、その罰なんやろう。
慣れない喪服なんぞ着て、なんで遠いところ出かけていったのか。
アカギの死を確認して、それで一体何がどうなるっちゅうんや。
実際、あいつを本当に葬ることができるのは、自分が葬られるその日なのかもしれんかった。
視界が滲むのは、窓の外を伝う雨粒のせい。
そういえば昨日から寝ていないのやった。眼尻がじんじんと熱い。
――赤木しげるは死んだ。
そう考えた瞬間、自分が底知れぬ穴に落ちていくのを感じる。これが喪失感というやつなのかも知れんかった。
だが。
その穴は闇で満ちていた。
窓を打つ雨の音が爆ぜるのを聞きながら、自分は、やわらかな闇に包まれるのを感じた。
(了)
PR