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スケッチ無頼

◆男性同士の恋愛(エロ含む)などを扱っております。 ◆閲覧は自己責任でお願いします。リンクフリー。転載などする際は一言お願いします。 ◆福本作品の二次作品中心です。個人ページであり、作者様・関係者様とは一切関係ありません。 ◆作品にならないスケッチあるいは管理人の脳内妄想だだもれ意味不明断片多し注意

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yagi01

【ホモエロ的展開】



矢木さんの幸せを考えて作った話です
いやマジで









【壱】





 矢木桂次が赤木しげるに再会したのは、残暑厳しい夏の終わりだった。


 人通りの途絶えた住宅街。前方の角を曲がった学生服姿に見覚えがあった。慌てて走って行って確認する。見紛いようの無いあの白髪。だらだらと物憂げに歩くあの背中――間違いない。

 アカギ……
 赤木、しげる……。
 
 全くの麻雀初心者であった中学生が、暴力団の代打ち――請け負って麻雀を打つ生業――である矢木を破ったのは既に数年前のことだった。その後アカギは掛金を倍増した勝負に挑み、あろうことか、この業界でトップクラスの男までも倒したという。
 皮肉なことに、そのことで矢木は、代打ちとして失いかけた信用を回復しつつあった。
 アカギ相手じゃしょうがない――。
 その夜の勝負は伝説となり、そんな慰めまでをも受ける始末。しかし、土がついたという事実は、矢木を日毎苦しめていた。

 矢木はプロの勝負師だ。
 相手が初心者だから、中学生だからといって、なめるような真似は決してしなかった。
 初めからアカギの実力を相当のものと見抜き、全力で挑んだ。しかし、確かに相手が悪かったとしか言いようがない。
 こちらが周到に蒔いた罠に、時にかかり、時に潜り抜け、アカギは迫ってきた。じわじわと間合いを詰められる恐怖。獲物であったはずのアカギが牙を剥いたときには、矢木はあっけなくその毒牙にかかっていたのだ。

 そのアカギが――忘れたことのない屈辱の相手が――今、目の前を歩いている。
 ほとんど日焼けをしていないので健康的、とまでは言えないだろう。しかし、開襟シャツからすらりと伸びた腕、細い首筋。少し成長し、若さという色を纏い、昼日向、太陽の下で見る少年は、あの夜――矢木を破滅に追い込んだ夜とは明らかに印象が違う。反射的に声を発する。
 
「ま、待てっ! おまえっ! アカギッ!」

 しかし、別人のように見えたのはアカギが振り返るまで。声をかけたのが矢木と知ると、アカギは無気力な学生の顔から豹変する。それは正しく――、あの夜の顔。悪魔じみた顔。
「――何だ矢木さんか」
 クッと笑い、至近距離まで迫って来る。
「オレに……なんか用」
 大の大人である矢木を完璧に舐めた態度。
 しかし、矢木は怒りを感ずるどころか、完膚無きまでに叩きのめされた記憶が蘇り、慄然とする。夏の暑さが去り、首筋に悪寒が走る。冷や汗――。そう、この発汗は暑さのためではない。矢木は刹那、後悔する。
 何故、声など掛けてしまったのか――。
「それとも……また、オレと勝負しようっての」
 矢木は黙ってしまう。戦う気持ちが無いことを見越しての発言。
 負け犬への牽制。挑発。
 しかし――ここで、怯んでいいのか。
(オレはこのガキに怯え、一生、敗者の烙印を押されたまま過ごすのか?)
 矢木を押したのはわずかに残ったプライドだったのか、それとも、アカギへの執着だったのか……。
「そうだ。付き合え」
 アカギは黙って相手の顔を見る。矢木はといえば、真っ直ぐに見上げられ、思わず目を逸らしている。
「ふーん……いいよ……」
 思いがけない同意。二人は連れ立って歩く。
 暑い夏の午後。アスファルトに湯気が昇る。どこかでセミが鳴いている。重苦しい足取りの矢木に対し、アカギは飄々とついて行く。そんな態度も、矢木を余計にいらいらさせた。

 途中、矢木にあることがひらめく。
(――そうだ。このガキを負かす方法!)



   ■□■□■



 足を速め、向かった先は……矢木の別宅。――といっても単なる安アパートである。普段はあまり使わないが、繁華街に近いこの部屋は、レートの高い卓を囲んだり、女を引っ張り込んだりするのに重宝していた。矢木はここにアカギを連れ込んだ。
 
 部屋は閉め切ってむっとしていた。
「暑いトコだなあ」
 アカギは勝手に窓を開ける。爽やかな風が一陣、入ってくる。しかし、照り返しを含んだ熱気がすぐに部屋にも浸透する。
「――なんだよ、扇風機くらいないのかよ」
 振り返ったアカギが零す。普通の学生の顔で、ごく当たり前のように。まるで、久しぶりに尋ねてきた親戚か何かのようにこの部屋になじむ。
「贅沢言うな……」
 矢木も、当たり前のように受ける。そしてはっとする。
 今、自分の目の前にいるのは魔物なのだ。自分が、全力で追い落とさなければいけない相手。何を、気を許すようなことを……。
 額を、汗が伝う。矢木は黙ってアカギの背中を見つめ、煙草に火を点けた。
 子供の顔をした紙一重の狂気。
(オレが……その顔……引きつらせてやるっ!)
 
 矢木がじゃらじゃらと卓を用意するのを見てアカギが座に着く。
「二人で麻雀やろうっての?」
「違う。もっと単純だ」
 矢木は一九牌と字牌を抜き出した。
「オレとお前……ヤオチュウ牌を一組伏せ、自分と相手の手から、順に一牌ずつ選ぶ。同じだったら当たり。外れたら、そのまま伏せる。これを交代で行って、当てた数が多い方が勝つ」
「ふーん。神経衰弱ゲームってことか……」
「……まあ、そうだ。だが、当たっても、続けて次を選ぶことはしない。一回交代制だ」
 ヤオチュウ牌は十三種。必ず勝敗は決する。
 無論、矢木には勝算がある。
 なんといっても、ここは矢木の家。矢木の所有する牌なのだ。
 馴染んだ牌……そう、矢木にとってはわずかな傷、印、そんなものも全てわかっている。表を返さなくても多くの牌が見える――つまり「ガン牌」が出来るのだ。麻雀の腕も才気も関係ない。これは自分が勝つためのギャンブル。
 負けるはずがない。これは確信。

 二人で合計二十六牌選び、互いに伏せる。先に引く自分の手牌は自由に配置できる。
「で、どうする、矢木さん? あんた、また腕でも賭けるっての」
「そんなんじゃダメだ……」
「……?」
「オレは……おまえのせいで全てを失った。おまえには……腕一本じゃ足りない……」
 勝ちの濃い勝負。負け犬にくすぶっていた、ギャンブラーとしての炎がチロチロと揺らめき始める。
「こういうのはどうだ? おまえがこれから一生涯賭けて稼ぐ金。その半分を寄越せ。腕なんかより……金だ」
 矢木は予感している。アカギは将来一流の博徒になる。それも超一流の。
 そうだ――。こいつには償いを、させてやる。
「ククク……バカじゃねぇの……」
 アカギは矢木から目を逸らさず、笑った。
「またそうやって回りくどいことをするんだね」
「……回りくどい?」
 矢木は当惑する。
(一体なんのことだ?)
「埒も明かぬ先の話……そんなもんでオレを縛ろうっての? もっと……ストレートに言ったらどう?」
「……え?」
「アンタが欲しいのは……オレだろ?」
「な、何っ……?」
(オレが、このガキを……?)
 しかし――。
 そう言われれば確かに、そういうことになるかもしれない。こいつの容量の知れぬ才。それを自分に引き寄せたい。あやかりたい。そんな気持ちがないでもない。もとより、自分の多寡は知れている。
(そうだ、こいつを、一生飼い殺しにしてやる!)
 負け犬の――痩せた考え。
「ククク……」
 アカギは目を伏せ、笑う。
「アンタが勝ったら、オレを煮るなり焼くなり好きにするがいいさ。金だって欲しいだけ、たかればいい……だけど」
 再び鋭く差す眼光に、矢木はたじろぐ。
「オレが勝ったら……アンタのその、がんじがらめの……プライドを頂く」
「プライド……?」
 何のことだ……? がんじがらめ……?
 さっきから、こいつは何を言っている?
「オレに賭けるものがないとでも、思ってるのか!」
「……は?」
「全てを失ったといっても、まだ金ならある、馬鹿にするな!」
「……やれやれ。じゃあさ、もっとわかりやすくしよう。相手から一番奪いたいものをもらう。それでいいだろ」
「あ――ああ」
 まあ、それなら異存はないと、矢木はようやく納得する。実際これは互いの破滅をかけた勝負。その覚悟が矢木に本当にあったのか。勝利の確信――、それは勝負師の目を曇らせる。

「で、順番はどうする?」
「公平に――サイコロで決めよう」
「公平に、ね……」
 先番は矢木。引ける回数は十三回。先番が有利なのは自明。
 当然初めから勝ちを狙う。矢木は一枚目から当てに行った。まずは自分の手牌から一枚を引く。
「――中」
 そしてアカギの手牌を選ぶ――同じく「中」。
「よし、幸先がいいな……まずは一勝、と」
 アカギは牌をじっと見ている。
「暑いな……」
 そう言って、アカギは上着のボタンを外し出し、はだけさせる。ワイシャツの下は青白い素肌。ふと思いついたように、アカギが言う。
「なあ、矢木さん……こういうのはどうだい? 相手の手が揃ったら、一回毎に服を脱ぐっての……」
「はあ? なんだそりゃ……」
 矢木は本気で呆れた。
 芸者遊びにもそんなのがあるが――さすがに子供染みている。第一そんなこと、男同士でやったって……面白くないだろうと考える。
「まあ、いいじゃない……暑いんだしさ。まずはオレが脱ぐよ」
 そのままシャツを脱ぐのかと思いきや、アカギはカチャカチャとベルトを外し、学生ズボンをするりと脱いだ。
「おい……」
(なんなんだ、コイツは……)
 いくら家の中といっても、ここは初めて入った他人の家。トランクスで寛ぐとは、図々しいにも程がある。矢木が呆れると、アカギは自分の牌を開けた。
 ――發。
 続けて矢木の牌。
「發……当たりだ」
「えっ」
 自分はガン牌だが、アカギは……偶然、か?
「どうしたの、矢木さん?」
「おまえ――」
「オレも矢木さんも一発目から当てるなんて、調子いいんじゃない?」
(確率は十二分の一。当てられないことはないだろうが……このガキ――まさか、山から抜いたのか?) 
 矢木が残った牌を確かめる前に、アカギが急かした。
「ほら、早く脱いでよ」
「――何?」
「服」
「な、何言ってんだ、そんな下らない真似できるか!」
 瞬間、アカギの目が鈍く光る。
「なあ……アンタの誘いに乗ってここまで付き合ってんだぜ? オレのいう条件、一つくらい呑んでくれたっていいんじゃないの?」
 反論ではない。これは命令。この少年に……この男に、矢木は逆らえない。
「う……。じゃあ、つきあってやる、か……」
 しぶしぶシャツを脱ぐ。もっとも、下着一枚になると暑さが薄らぎ、思いのほか清清しい。
 次は矢木。
 一索。無難に当てる。
 アカギは靴下を脱いだ。矢木は一瞬、そっちに気をとられ、ちらっと見る。シャツの下に見え隠れする足は、まるで女のように白い。アカギは無造作に胡坐をかき、牌をじっと見つめる。
「オレの番だな……一萬、と」
 一萬。やはり狂わずに当ててくる。
「お前……まさか……?」
「何? ……早く脱ぎなよ、矢木さん」
「くっ……」
 山をチラッと見ながら、矢木も靴下を脱ぐ。素足に触れる畳は心なしかひんやりとして快適だった。
 再び矢木。今度は九索。当たり。問題ない。この牌は全てわかっている。負けるはずがない。
 アカギはトランクスを脱ぐ。
「えっ……!」
「何?」
「お前、それは順番が違うだろっ、普通それは最後……」
「オレが自分の服をどう脱ごうと勝手でしょう。何か問題ある?」
「問題……って……」
 いくら男同士とはいっても、目の前に下着をつけてない人間がいるというのは落ち着かない。勿論、矢木が純情だったというわけではない。顔も金離れもよい矢木は、女に不自由したことなどなかった。相手が素人でも玄人でも関係ない。色事に関する多少の自負はあった。
 だが――ことアカギの前では、どうも調子が狂う。子供――否、皮一枚下は魔物だと思っていても――妙な艶を持っている。色気といってもいいそのオーラは、矢木を追い詰めいていく。勝負に対する熱とアカギへの奇妙な緊張感は、徐々に矢木を狂わせていく。
 悪魔は囁く。
「どうかしたの、矢木さん?」
 くくっと笑うその声に意識をかき乱され、再び額に汗がにじみ出る。矢木の平常心を、悪魔が浚う。

 アカギがつ、と座り直し、足を組み替え、自分をじっと見つめる。
 ただそれだけのことで、集中できない。目のやり場に困る。鼓動が荒らされる。
 確かに雀力は未曾有の才。それは誰よりも矢木が一番よく知っている。だが……今のこの状況はどうだ。たかが尻の青いガキ、しかも少年に……、惑わされるなんて言語道断。
(そもそも服を脱ぐのは、ついでの遊びなんだ。本当の勝負は……本当の勝負は……もっと違う……別の……)

 集中力を欠いた勝負師には転落しかない。結局、矢木は連続で外し、アカギは当然のように全てを当てる。
 ズボン、下着と剥ぎ取られ、ブリーフ一枚になる矢木。
(これを外したら俺は……)
 しかしいくら目を凝らしても、目印のキズが見えない。
「くそっ……」
 いつの間にか、アカギがすり替えたのか。しかし、そんな暇などあっただろうか?
 九萬。そして、アカギ側の手牌――白。
「またハズレ。オレに勝つ……当てが外れたかい? さあ、脱ぎなよ」

 す、と立ち上がったアカギは、矢木の後ろにやってくる。肩に、冷やりとしたアカギの手の感触。背中には矢木を翻弄したシャツがさらりと触れる。口を寄せ、耳元で囁く。
「……なんなら、オレが脱がしてやろうか?」
「くっ……」
 冷やりとしたアカギの手を払いのけ、矢木は自ら最後の鎧を脱ぐ。
 そして、とうとう裸身。唯一身に纏ったのは――屈辱。
 
「……ククク……いい格好だな、矢木さん……」

 奇しくも牌の数は十三。
 矢木は自分が地獄への階段を登っていることにようやく気づく。だが、もう既に遅かったのだった。



続く……

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